コラム

顔も位置もDNAも把握される――米国で現実化する「SF級監視国家」

2026年01月03日(土)08時34分

ICEが契約している民間企業の例

Flock Safety社は、全米の高速道路、幹線道路、駐車場に設置された8万台以上のカメラネットワークが送る静止画像からナンバープレートを認識し、データベースと突合するシステムを持つ監視企業だ。収集したデータをPCやスマホで利用するためのアプリ「FlockOS」でナンバープレートをスキャンすれば、即座に所有者の個人情報がわかる。

それだけでなく、ナンバープレートリーダーを監視カメラとしても活用しており、カメラ前を通過する車両のライブ映像や15秒クリップを確認したり、AIによる自然言語検索でカメラが捉えたあらゆるものを検索したりすることができる。自動車を監視装置に変えたと言ってもよいだろう。いずれ顔認識機能とも連動する可能性が高い。

ICEやCBP、全米の警察(49州5,000の法執行機関顧客。アラスカ州には未導入)を主要顧客としている。市場占有率は高く、活動家グループ「DeFlock」が収集したナンバープレート読み取りカメラのデータによれば、3分の2がFlock社製だった。

Palantirは10年以上にわたり、「Falcon」と呼ばれる分析ツールや、ICEの捜査データベースおよび捜査案件管理システムを構築してきた。最近では、国外退去対象者を特定・優先順位付けするプラットフォーム「ImmigrationOS」の構築を受注している。

同社の捜査案件管理システムは多様なデータを統合するプラットフォームで、数百のカテゴリー(移民ステータスや出身国から、傷跡、タトゥー、ナンバープレート読み取りデータまで)で人物検索が可能となっており、そこには位置情報履歴、SNS、金融記録、生体認証識別子といった情報も含まれている。

このプラットフォームにはSNSの投稿の分析も含まれているが、さらに一歩進んでICEに否定的な感情を持つ個人や暴力などの脅威となりうる個人をSNSやオープンソース情報から特定し、監視対象とする計画もある。

トムソン・ロイターの「CLEAR」は、公共料金請求書や車両登録、信用情報など数百万人分のデータを蓄積したデータブローカーで、全米規模のナンバープレート監視ネットワークも有している。ICEの捜査官はスマホで車両をスキャンし、「警戒リスト」に載っている車両があれば即座に把握できる。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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