コラム

静かに進む「デジタル植民地化」──なぜ日本はデジタル主権を語らないのか

2025年11月28日(金)12時26分
なぜ、デジタル主権が問題なのか? AIが変えたデジタル主権の重要性

tete_escape -shutterstock-

<欧米では重要な政策課題として語られているにもかかわらず、日本では政治家や専門家、メディアでほとんど取り上げられないテーマがある。その一つが「デジタル主権」だ>

近年、日本をのぞくグローバルノースの民主主義国の政治家が口にすることが多い。中国やロシアのような権威主義国は以前からデジタル主権に似たところのあるサイバー主権という概念を提唱してきた。インドは独自のアプローチで中米のデータ寡占への対応策を行っている。

デジタル主権が問題となる理由

各国がデジタル主権や類似の概念を取り上げることが増えた理由ははっきりしている。ひとつはデータが国家として自律的な意思決定にとって欠かせないものとなっているためだ。現在、中国とアメリカの両国は世界に展開するネットサービスを経由して世界中のデータを寡占している。

クラウドだけでなく、IoTのサーバーもそうだ。ロボット掃除機や安価な体組成計やスマートウォッチは中国企業が多く参入しており、その利用にはスマホへのアプリのインストールが前提となる。スマホの中のデータの一部はアプリを介して中国のサーバーに送られている。

日本で話題になった監視カメラはごく一部にすぎないのだ。中国とアメリカは多くの国の政府よりもその国の国民のデータを保有している。

もうひとつ重要なのはAIの普及だ。AIが今後の社会において経済や文化のインフラとなった場合、国家主権とAIを切り離して考えることはできない。そしてAIもまた中国とアメリカが寡占状態にある。

本題に移る前に、データ主権、デジタル主権、サイバー主権のそれぞれのおおまかな定義について整理しておこう。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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