コラム

日本製品は安いけれど劣悪、アラビア語の「日本製」は「尻軽女」を意味していた

2019年09月27日(金)18時00分

bagi1998-iStock.

<1920年代後半から1930年代にかけ、大半の中東諸国で日本は最大の貿易相手国の1つになっていた。日本とイラクの外交関係樹立80年に振り返る、知られざる歴史>

今年は日本とイラクの外交関係樹立80周年に当たる記念すべき年である。1939年11月30日、イラクの首都バグダードに日本の公使館が開かれたのだ。といっても、大半の人にとってはどうでもいいことかもしれない。日本国内でとくに大きな盛り上がりがあるわけでもなく、私の周りの中東に関わる人たちのあいだですら、ほとんど話題にものぼらない始末である。

ちなみに今年は日本とイランの外交関係樹立90周年でもある。10年分古いだけあって、まだ、こちらのほうが注目度は高いかもしれない。あちこちでチラホラとイベントが開催されているようだ。イランを専門とする研究者も多いし、さすが中東の大国という感じだろうか。

安倍首相も、90周年とは関係ないかもしれないが、6月にイランを訪問し、ハーメネイー最高指導者やロウハーニー大統領と会見したのは記憶に新しいところだろう。

私はイラク専門家ではないが、わずか4か月とはいえ、曲がりなりにもイラクに住んでいたので、80周年を寿ぐ気持ちは満々である。幸い在バグダード日本大使館から依頼を受け、イラク人向けに日本とイラクの関係史について講演する機会を得た。

ただ、予算の関係でイラクにいくことはできず、スカイプで日本とイラクを結び、PCの画面に向かって話をするという、いささか味気ないものであった。しかし、イラク側の聴衆はたいへん熱心で、多くの人たちが講演後の質疑応答も含め、積極的に参加してくれた。日本に対する彼らの期待が大きいこともひしひしと感じられた。

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筆者の講演を熱心に聞くイラクの聴衆(写真提供:在イラク日本国大使館)

中東で石油が発見される前から、強力な経済関係を構築していた

なお、私がイラク人向けにしゃべったのはもっぱら古い話で、1939年の日本公使館オープンごろまでの二国間関係についてである。日本人で最初にイラクにいったのは、記録で確認できるかぎり、1880年の吉田正春を筆頭とする外務省代表団だろう。吉田は現在の高知県出身で、父親は土佐藩の参政、吉田東洋である。東洋は1862年、土佐勤王党のリーダー、武市半平太の命で暗殺されている。まだまだ「鎖国」の残り香ただよう時代だ。日本が中東に目を向けたのはかなり早いといえる。

吉田使節団の目的は、イランやオスマン朝との国交樹立の可能性を探るためであった。ただし、吉田らがイラクを訪問したときは、イラクはオスマン帝国の一部にすぎず、イラクへの立ち寄りは文字どおり付録みたいなものであった。吉田使節団には横山孫一郎という、当時大倉財閥の幹部だった国際通の経済人が同行していた。これは、日本が中東と通商関係を開くことを強く意識した人選といえる。

プロフィール

保坂修司

日本エネルギー経済研究所理事・中東研究センター長。日本中東学会会長。
慶應義塾大学大学院修士課程修了(東洋史専攻)。在クウェート日本大使館・在サウジアラビア日本大使館専門調査員、中東調査会研究員、近畿大学教授等を経て、現職。早稲田大学客員教授を兼任。専門はペルシア湾岸地域近現代史、中東メディア論。主な著書に『乞食とイスラーム』(筑摩書房)、『新版 オサマ・ビンラディンの生涯と聖戦』(朝日新聞出版)、『イラク戦争と変貌する中東世界』『サイバー・イスラーム――越境する公共圏』(いずれも山川出版社)、『サウジアラビア――変わりゆく石油王国』『ジハード主義――アルカイダからイスラーム国へ』(いずれも岩波書店)など。

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