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コラム:日本車で強さ際立つトヨタ、関税課される米国でも厚い利益率で柔軟価格

2025年06月30日(月)17時14分

 関税はトヨタ自動車の優位をますます強めるだろう。写真はトヨタ自動車フランス工場の組み立てライン。2024年4月、フランスのバレンシエンヌ近郊で撮影(2025年 ロイター/Benoit Tessier)

Katrina Hamlin

[香港 30日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 関税はトヨタ自動車の優位をますます強めるだろう。トランプ米大統領が自動車の輸入に25%の追加課税を課したが、トヨタは米国でほとんど値上げしていない。自動車関税で日本政府がトランプ政権から猶予を勝ち取れなかった場合、マージンの薄いメーカーがトヨタに追随することは難しく、市場シェアを急速に失う可能性がある。

トヨタは今月、「通常の価格改定の一環」で米国で販売する一部車種を平均270ドル値上げすると発表した。ビジブル・アルファによると、これは北米での平均販売単価のわずか0.7%相当という。

18日に日本の財務省が発表した5月の貿易統計(速報)では、米国への自動車輸出が金額では前年比24.7%減となった一方、台数は3.9%の減少にとどまった。これは米国の輸入業者が値上げでなく関税コストを事実上吸収することを選び、関税発効前に価格を引き下げたことを示唆する。

このような戦略は、ほとんどの企業にとって持続可能ではない。トヨタの2025年3月期の営業利益率は10%で、国内同業は平均5%だった。トヨタは価格を安定させる柔軟性に富み、仮に課税に伴うコストを吸収したとしても営業利益率は下がって7%程度とモーニングスターのアナリスト、ヴィンセント・サン氏ははじく。

対照的にホンダが同じアプローチを取った場合は25%の減益、苦境の日産自動車は営業損失が3分の1近く拡大するとサン氏は試算する。結局、弱い企業は顧客にツケを回すしかない。コンサルティング会社アリックスパートナーズによれば、仮に日米が貿易協定を締結し関税が半減しても、日本の輸入業者はその影響の約8割を消費者に転嫁しなければならないとみられる。

これは市場シェアの面でも由々しきことだ。値上げを避けられない自動車メーカーはトヨタだけでなく、日本にとってはさらに悪いことにテスラのような日本以外のブランドにも負ける可能性がある。ホンダと日産にとって米国は最大の単一市場であり、米国向けは24年の世界販売台数の1割以上を占めている。

日本企業で関税の痛みに耐えられるのはトヨタくらいだろう。

●背景となるニュース

*トヨタが米国で値上げ、7月から平均3万円超 関税の直接影響を否定

*貿易収支5月は6376億円の赤字、自動車不振で対米輸出21年以来の減少幅

*日本の自動車貿易は「不公平」、原油など輸入可能=トランプ米大統領

ロイター
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