コラム

参院選が問うのは消費税ではない

2010年06月29日(火)15時30分

 6月24日に公示された参院選で、440人の候補者が121議席をめぐって選挙戦を繰り広げている。

 菅直人首相が鳩山由紀夫から民主党党首と首相の座を引き継いだことで、今回の選挙の重要性が浮き彫りになった。5月まで、参院選は鳩山と小沢一郎元幹事長のリーダーシップを問う国民投票という位置づけで世論調査で民主党の勝利は難しいと見られていた。

 しかし、参院選は今や日本の未来を占う選挙となっており、昨年の歴史的な衆院選以上にこの国の将来を左右するかもしれない。民主党が参院の過半数を確保すれば、衆院を解散しない限りこの先3年間は選挙の心配をしなくて済む。短命政権なら手を出せない消費税引き上げといった難しい政治的決断も、3年かけてじっくり議論することができる。

 だからこそ、今回の参院選は日本の未来にとって重要だ。日本国民にとって、選択肢は明らかだろう。民主党政権下で、今の日本には前任者にないものすべてをもつ首相がいる。菅は、首相として腰をすえて政権運営する意気込みがあるようにみえ、クリーンな政治と精力的な政治的リーダーシップを標榜している。菅の下で、民主党は再び日本のガバナンスに大きな変化をもたらす能力がある政党のように見える。

■統一政権か、割れた政権か

 選挙期間中、消費税と財政赤字削減に議論の焦点が置かれるだろう。ただ、今回の選挙で本当に問われるポイントは、各政党が示す政策よりも、むしろ日本の国家運営についてだろう。 「強い経済、強い財政、強い社会保障」を実現するために衆参両院で統一された民主党政権に国家を託すか、それとも法案通過のため連立を組んで他党と協力せざるを得ない「割れた政権」にするか、の選択だ。

 言い換えれば、有権者は次の2つの選択肢を迫られている──菅政権が野心的な政策(修正されたが)を実行に移す3年間の「選挙で選ばれた独裁政権」か、もしくは自民党やみんなの党、公明党などの政党が政権に待ったをかけて国家運営を遅延させるシステムか。

[日本時間2010年6月24日11時07分更新]

プロフィール

トバイアス・ハリス

日本政治・東アジア研究者。06年〜07年まで民主党の浅尾慶一郎参院議員の私設秘書を務め、現在マサチューセッツ工科大学博士課程。日本政治や日米関係を中心に、ブログObserving Japanを執筆。ウォールストリート・ジャーナル紙(アジア版)やファー・イースタン・エコノミック・レビュー誌にも寄稿する気鋭の日本政治ウォッチャー。

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