コラム

マムダニNY市長は、トランプに追い詰められた民主党を救う「正解」か

2025年11月22日(土)09時40分

ニュージャージーとバージニアでも勝利

マムダニがニューヨーク市長に当選した日、ほかに2人の新進気鋭の民主党穏健派政治家が州知事選で当選した。ニュージャージー州のマイキー・シェリルと、バージニア州のアビゲイル・スパンバーガーだ。彼女たちは、前回大統領選でトランプが制した地区でも圧勝している。

有権者が抱く経済的な不安に働きかけたところは3人に共通しているが、異なる点もある。マムダニは公共交通機関や保育サービスの無償化、家賃の統制を公約し、何より超富裕層への激しい非難を繰り出した。それに対し、シェリルとスパンバーガーは財政規律を重視し、「党派主義より現実主義」を訴えた。


民主党の穏健派は今でも、シェリルとスパンバーガーのような中道路線こそ勝利への道だと考えている。一方の進歩派は、民主党が原理原則をないがしろにして右派への譲歩を繰り返したために、選挙で負け続けることになったのだと考えている。

マムダニの勝利により、進歩派陣営に有力なリーダーが1人増えたことは間違いないが、論争に決着がついたわけではない。マムダニ流が打倒トランプの必勝法なのか、それとも今回の選挙結果はあくまでもニューヨークならではの結果なのかは、まだ結論が出ていない。そもそもニューヨークに限っても、マムダニは金融エリートたちのニューヨーク脱出を引き起こすことなしに、選挙での公約を全て達成するための財源を確保できるのだろうか。

ニューヨーク市長選の勝者と敗者は決まったが、これにより民主党内の穏健派と進歩派の路線対立がおしまいになることはない。アメリカ社会における「持てる者」と「持たざる者」の分断がなくなるわけでもない。これまでより手厚い支援を受けることになる平均的なニューヨーク市民は大満足かもしれないが。

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グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

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