コラム

トランプがぶち上げた「ガザ100万人強制移住計画」の既視感

2025年05月31日(土)20時20分
ユダヤ人

テルアビブにあるディアスポラ(離散)の歴史を展示した博物館のレリーフ SODABOTTLE/WIKIMEDIA COMMONS

<トランプがぶち上げた「ガザ100万人のリビア移住計画」。荒唐無稽なのはもちろんだが、歴史を考えれば、このような「不正義」はユダヤ人が身をもって体験してきたことでもある>

トランプ政権のアメリカでは毎日のように常軌を逸したことが起こり、民主主義と経済の繁栄が急激に破壊されている。ホワイトハウスが主導するファシズムと腐敗があからさまになる日々の中で、トランプ政権がパレスチナ自治区ガザの民族浄化の計画を検討しているというニュースは、(少なくともアメリカのメディアでは)ほかの多くのニュースに埋もれ忘れられてしまった感もある。

5月16日の米NBCニュースの報道によると、トランプ政権は、最大100万人のガザの住民をリビアの砂漠に移送することを計画している。これにより、トランプ大統領が今年2月に述べたように、アメリカがガザを長期にわたり「所有」して「中東のリビエラ」に様変わりさせ、パレスチナとイスラエルの紛争を解決すると同時に莫大な利益を獲得しようという思惑なのかもしれない。トランプは、アメリカと世界に君臨する皇帝にでもなったつもりなのだろう(もっとも、米当局はこの計画に関する報道を「事実でない」とコメントしている)。


ガザの現状は悲惨を極めている。2023年10月に今の戦争が始まって以降、イスラエル軍はガザの住宅の70%近くを一部もしくは完全に破壊。死者は5万人を超す。WHO(世界保健機関)によると、ガザの人口の約4分の1に相当する50万人近くが深刻な食糧不足に陥っている。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

高市首相「首脳外交の基礎固めになった」、外交日程終

ワールド

アングル:米政界の私的チャット流出、トランプ氏の言

ワールド

再送-カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブル

ワールド

北朝鮮、非核化は「夢物語」と反発 中韓首脳会談控え
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 7
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 8
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 9
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 10
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story