コラム

トランプの「残酷で危うい国際システム」が始まる

2025年03月29日(土)19時29分

国際的なルールなどお構いなし

米ロ電話会談は、ロシアにとって絶好のタイミングで行われた。戦場で現在ロシア側が攻勢をかけていることは事実だが、その代償としてロシア軍は毎週1000人以上の死傷者を出している(これまでの死傷者数は合計で約90万人に上っている)。加えて、ロシア経済の状況も厳しい。インフレ率は、中央銀行の政策金利である21%を上回っている可能性が高く、通貨ルーブルの価値は、ウクライナ侵攻前に比べて大幅に下落している。

言うまでもなく、アメリカの軍事面と資金面の支援がなければ、ウクライナが戦闘を継続することは極めて難しい。欧州諸国はウクライナ支援を強化しているが、いまウクライナが置かれている状況は、2022年2月にロシアによる軍事侵攻が始まって以来、最も厳しい。アメリカがウクライナへの情報提供と武器支援を取りあえず再開したことがせめてもの救いだ。


18日の電話会談では、トランプが相変わらずプーチンと足並みをそろえる姿勢を示し、ロシア政府を大喜びさせた。トランプは1月に大統領に返り咲いて以来、ウクライナを見捨て、アメリカとヨーロッパの80年間にわたる同盟関係をないがしろにする姿勢を取り続けてきた。電話会談での振る舞いもその一環と言えるだろう。

最も見過ごせないのは、トランプがどのような国際システムを目指しているのかが改めて浮き彫りになったことかもしれない。トランプは、これまでよりも残酷で危うい世界を志向している。その世界では、いくつかの大国が交渉と駆け引きを行い、国際的なルールなどお構いなしに、小国の運命を勝手に決めることになる。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

独ZEW景気期待指数、3月は-0.5に急低下 中東

ビジネス

JPモルガン、英利下げ時期の予想を先送り 27年第

ワールド

UAE主要原油拠点に攻撃、積み込み一時停止 タンカ

ワールド

インド、ホルムズ通航巡るイランとの拿捕タンカー返還
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在の価値でどれくらい? 誰が何のために埋めた?
  • 3
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったのか?
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 6
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 7
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story