コラム

コロナ禍の東京五輪に、私たちが夢中になる理由

2021年08月02日(月)11時30分
古代オリンピック

スポーツを見る心理は古代オリンピックも今も変わらない SCIENCE SOURCE/AFLO

<過去最高を記録し続ける東京と日本のコロナ感染者数。それでも日程に変更はなく、世界中で多くの人々が東京五輪のメダル争いに見入っている。なぜか。そこには4つの理由がある>

東京と日本の新型コロナウイルス感染者数は過去最高を記録し続け、7月末には東京で1日4000人を突破。日本全体でも1万人を超えた。

だが、東京五輪の日程に変更はない。競技場は無観客だが、世界中で多くの人々が最高のアスリートによるメダル争いに見入っている。

感染力の強いデルタ株の感染が世界で急拡大しているが、アメリカでも大リーグの試合に連日多くの観客が集まっている。

なぜ多くの人がスポーツを見たい、参加したいと思うのか。私たちがウイルスの脅威にも負けず、重量挙げや野球、水泳などに熱中する理由は次の4つだと考えられる。

■幸福感

私たちは自分を独立した1人の個人と思っているが、その認識は間違いだ。心理学者によれば、人はしばしば自分と「外の世界」を区別できない。

誰かや何かと心理的に密接な関係にあるとき、脳はその成功や特徴が自分の肉体に属するのか、密接な関係にある別の誰かや何かに属するのかを区別できないことが多い。

スポーツ観戦はこの性質と深く結び付いている。私たちは自分とひいきのスポーツチームや選手、仲間のファンを一体化させる。彼らの成功を共有し、文字どおり神経レベルで一体感を抱くのだ。

選手たちの経験やスキルは心理的に(または疑似体験として)私たち自身のものになり、それによって私たちは自分以上の存在になる。

■帰属意識

この神経レベルでの他者との融合は、同じ「内集団」の一員であるという強力な帰属意識を生む。

人間は社会的動物だ。自分の生存と幸福を、成功したグループの一員であることに依存してきた。例えば家族や部族、そして五輪の日本代表だ。

私たちは本能的に、人を同じグループの一員かどうかで分類する。スポーツは特定のグループに所属するための手っ取り早い手段だ。ファンになれば、単に試合の勝ち負けやファインプレーを見たときよりも、もっと深い喜びを感じられる。

内集団に属していると、自尊心や幸福感が高まる。チームと一体化すれば、孤独感や疎外感が弱まり、ポジティブな感情や自尊心が強くなる。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、反ファシスト運動「アンティファ」をテロ

ビジネス

機械受注7月は4.6%減、2カ月ぶりマイナス 基調

ワールド

ロシア軍は全戦線で前進、兵站中心地で最も激しい戦闘

ワールド

シリア、イスラエルとの安保協議「数日中」に成果も=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story