コラム

カニエとトランプは2人とも「アップルパイと同じくらいアメリカらしい」

2020年07月17日(金)16時15分

それよりも注目すべきなのは、ウェストの行動がアメリカ社会の実像を映し出していることだ。彼の一連の振る舞いは、アメリカの民主主義を体現するものと言える。アメリカ独立革命は、市民を主権者、国家を市民への奉仕者と位置付けた。それ以降のアメリカの歴史は、個人の権利を少しずつ、しかし着実に拡大し、既得権を突き崩して能力主義に置き換えようとする闘争の歴史だった。

その結果、アメリカの文化は、エリートを民主主義の精神に反する存在と見なす傾向がある。専門家の知識はしばしば揶揄の対象になり、非民主的、言い換えれば「非アメリカ的」なものと決め付けられる。

ドナルド・トランプとカニエ・ウェストは、「誰でも大統領になれる」というアメリカンドリームをゆがんだ形で実践しようとしている。2人は、専門家やエリートを拒絶するアメリカ文化の申し子と言える。

その意味で、アメリカの慣用句を使って表現すれば、トランプとウェストは「アップルパイと同じくらいアメリカらしい」存在だ。問題は、リンゴの中にしばしば害虫が入り込んでいることなのだが。

<本誌2020年7月21日号掲載>

【話題の記事】
キム・カーダシアンの「キモノ」に怒った日本人よ、ジンギスカンの料理名を変えて
中国のスーパースプレッダー、エレベーターに一度乗っただけで71人が2次感染
韓国は「脱日本」の成功を強調 日本の輸出規制から1年、その実態は?
「BCGは新型コロナによる死亡率の軽減に寄与している可能性がある」と最新研究

20200721issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月21日号(7月14日発売)は「台湾の力量」特集。コロナ対策で世界を驚かせ、中国の圧力に孤軍奮闘。外交・ITで存在感を増す台湾の実力と展望は? PLUS デジタル担当大臣オードリー・タンの真価。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ユニクロ、4月国内既存店売上高は前年比1.3%減 

ビジネス

JR西、発行済み株式の4.2%・500億円を上限に

ビジネス

英スタンチャート、第1四半期は10%増益 関税巡る

ビジネス

米関税の影響経路を整理、アジアの高関税に警戒=日銀
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story