コラム

社交性信仰が日本をダメにする

2021年04月21日(水)18時10分
山田真貴子前内閣広報官と安倍前首相

社交性がアダとなった?山田前内閣広報官(右、写真は2013年11月) Yoshikazu Tsuno/Pool-REUTERS

<とくに公僕にあっては「飲み会を断らない」ことより、孤高でいられることのほうが大事だ>

「飲み会を絶対断らない人」こと山田真貴子前内閣広報官が急転直下辞任したのはつい先月の事である。東北新社に端を発した接待問題はNTTにも波及した。「飲み会を絶対断らない」どころか、そもそも「飲み会に誘われない」私は、この問題の本質を旺盛な社交性にあると見る。


「飲みニケーション」は死語になったのであるが、未だに飲み会を梯子することで人脈を築こうとか、人との関係性を築こうと考えているその魂魄自体が前時代的で封建的発想である。山田前内閣広報官の最大の失敗は、接待を受けたその相手が菅総理の息子だったという事が本質ではなく、彼女の横溢する社交性が完全に裏目に出たことだ。社交性があるからこういうことになるのだ。社交性が無く最初から飲みに誘う・誘われる人間がいなければ、彼女は公務員を辞任する羽目にはならなかったであろう。社交性とは本当に恐ろしいモノであると実感した。

コロナ禍下で緊急事態宣言が解除された後も、新規感染者の急増により大阪、東京、沖縄など全国各地で所謂「まん防」が発出された。このような事態にあって、週刊誌が著名人や議員らの会食や飲み会をすっぱ抜き、その度に世論から激烈な罵声を浴びせられている。緊急事態宣言も「まん防」による会食自粛要請等も、あくまで要請であって法的強制ではないので、個人の自由意思で何時であっても飲み歩くことは何ら問題とすべきことではないが、この程度のことで週刊誌がセンセーショナルに書き立てるとはよほどネタに困っているか、日米地位協定およびそこから派生する所謂「在日米軍特権」という「巨悪・不平等」に対する国民世論の関心を逸らさせん為のワシントンの狡猾なる工作に違いないのである。

それはともかく、本当に私には社交性というモノがない。大学(京都市内)では友達が全然できなかった。正確に言うと最初の六か月程度はなんとか友達が出来たが、私自身、学部の授業に出るのが面倒くさくなったので、学校に行かなくなってしまった。そのため畢竟彼らとは疎遠になってしまった。それどころか、大学に入って初めて誘われた合コンの席の自己紹介で、

「自公保(当時は、自民・公明・保守党)連立政権を皆さんいかが思うか。公明党が清和会の小泉内閣と連立をし続けるのは、"平和と福祉の党"を標榜する同党の党是と反するものである。このまま公明党は自民党に追従していてよいと考えるか」

などという大演説をぶってしまったため、二度と合コンに呼ばれなくなった。国際連盟を脱退した松岡外交の如く完全に孤立した私は、学部一年生後半で大学中退の意志を固めつつ大阪の映画学校に通う段になったが、結局その学校を中退してしまい、またも大学にUターンする羽目に相成ったのである。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米経済にひずみの兆し、政府閉鎖の影響で見通し不透明

ワールド

トランプ氏がウォール街トップと夕食会、生活費高騰や

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、米政府再開受け経済指標に注

ビジネス

再送-〔兜町ウオッチャー〕AI相場で広がる物色、日
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 6
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story