コラム

女性支援団体に対する執拗な嫌がらせの実態が明らかに

2023年05月24日(水)14時20分

前掲のコラムで、Colaboによる支援事業のひとつ「バスカフェ」が迷惑系YouTuberらによる直接的な妨害にあっているということを紹介したが、約半数の団体が支援事業に対する直接的な妨害を受けている。事業所をネットに晒された影響で、無関係な人が事業所の周りで撮影や配信をしたりゴミ箱をあさったり、関係者に不審なアプローチをしたりするなどの被害が半数の団体でみられた。

さらに絶対あってはならないはずの、支援を提供する場所やシェルターの住所や画像が晒された団体が4分の1存在した。支援を必要とする女性にはDVや虐待からの被害者も多く、個人情報や居場所は絶対に知られてはならない。こうした団体は引っ越しも検討せざるをえなくなり、活動に大きな支障が出ている。

さらにスタッフや事業所に危害を加えるという脅迫が延べ10件ほどみられた。そうした脅迫がなかった団体は3団体にとどまった。

支援そのものが継続困難に

女性支援事業を継続していくうえで最も重要なのが、利用者および支援者の安全確保だ。しかし今回の「女性支援を守るメディア連絡会」の調査によって、その安全が脅かされているという深刻な事態が分かった。

当然ながら、今回調査された女性支援団体に不正はなかった。Colaboと同様、「東京都若年被害女性等支援モデル事業」を受託した団体に対して住民監査請求が出されているが、いずれも棄却もしくは却下されている。しかし言いがかりや思い込み、あるいはブログや動画のアクセス数・再生回数をあげる売名行為として、女性支援団体に対して、その事業を継続不可能にするほどの攻撃が続いているのだ。こんなことは許されるべきではない。

女性支援団体への嫌がらせは、当事者だけでは解決できない。Colaboはこれまで「疑惑」について逐一回答してきたが、そのたびに新たな言いがかりや難癖をつけられ続けており、攻撃は激化する一方だった。

そもそも、シェルターの暴露や事業所への押しかけといったストーカーまがいの行為まで行うような人間たちに、冷静な説得が通じるわけがない。そのような行動の動機は加害欲求によるところが大きいのだから、当事者の反発は彼らをエスカレートさせてしまう可能性もある。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ブラックロック、AI投資で米長期国債に弱気 日本国

ビジネス

OECD、今年の主要国成長見通し上方修正 AI投資

ビジネス

ユーロ圏消費者物価、11月は前年比+2.2%加速 

ワールド

インドのロシア産石油輸入、減少は短期間にとどまる可
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カ…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 8
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 9
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story