コラム

暴露された米大使館「タレこみ」対処マニュアル

2010年11月30日(火)17時01分

 アンジェリーナ・ジョリー主演のスパイ映画『ソルト』を見た人なら、諜報活動のなかで判断が最も難しい場面の一つが「飛び入り情報源」の扱いだということをご存知だろう。世界中の米国大使館やその他の公館を、アポなしで訪ねてきて情報を提供したい、と申し出る外国人のことだ。核拡散に関する情報をもっているかもしれないが、自国の政府に追われて命からがら逃げ込んできた可能性もある。

 外交官にとっては一件一件が神経を消耗する難問だ。飛び入りで訪ねてくるような連中は貴重な情報源か危険人物か、あるいはその両方かもしれない。

 今回ウィキリークスが暴露した書類のなかには、この飛び入り情報源をどう扱うかについての米国務省の秘密マニュアルが含まれていた。要約すると、手順は次のようなものだ。

 飛び入り情報源が武装していないかを確かめ、身分証明書や資料の類をできるだけ速やかに複写して、最初の尋問に入る。そして、訪問者の目的と身元が正当かどうかを探り出す(同マニュアルは、飛び入り訪問者は精神を病んでいるか情報屋か詐欺師か、敵対する情報機関の工作員か、あるいはテロ組織のために情報を収集している可能性もある、と警告する)。

■言語で差がつく情報源の価値

 もし彼らが本物なら、次は情報源としての価値を評価し、適切な政府職員に引き渡す。訪問者が保護を求めてきた場合、その事実は極秘扱いにする。「そうした要望があったという知識は、最低限知る必要がある人間にしか知らせない」

 より重要そうな情報が含まれた箇所もある。たとえば、優先的に扱う訪問者の言語として「ロシア語、スペイン語、アラブ語、ペルシア語、北京語、韓国語」を挙げており、米政府にとって潜在的に最も価値が高い訪問者の国籍がわかる。

 また大使館周辺の警備が強化されたせいで、訪問者が大使館以外の場所で外交官に接触しようと試みるケースが増えているとも記している(だが、大使館以外の場所で飛び入り情報源と会うことは望ましくないとも書かれている)。

 このマニュアルが公になってしまった今、飛び入りの扱いが今後どれだけやりにくくなるか容易に想像がつく。情報源のふりをして近づこうとするスパイにも、手の内を知られてしまったのだ。「ウィキリークス後」の世界で再考を余儀なくされる外交マニュアルはこれ一つでは済むまい。

──エリザベス・ディッキンソン
[米国東部時間2010年11月29日(月)14時32分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 30/11/2010. © 2010 by The Washington Post Company.

プロフィール

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国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

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