コラム

メドベージェフ、BP叩きの迫力

2010年06月21日(月)16時32分

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同業者 ガスプロム元会長のメドベージェフ(右)は、石油ビジネスのプロ
(09年5月、ハバロフスクの石油精製所で)
RIA Novosti-Reuters

 アメリカで原油流出事故を起こした英石油メジャーBPは、ロシアのドミトリー・メドベージェフ露大統領の同情を買うこともできなかった。メドベージェフは、かつて政府系の天然ガス・石油大手ガスプロムの会長も務めた同業者なのだが。6月18日付けのウォールストリート・ジャーナル電子版は次のように伝えた。


 22日からの初訪米を控えたメドベージェフもまた、メキシコ湾の原油流出事故で巨額の補償責任を負ったBPは「絶滅」、つまり分割される運命かもしれないという見方を示した。

 BPの原油産出量の4分の1を占めるロシアでの石油合弁事業を見直すとまでは言わなかったものの、この流出事故は世界中の石油探査プロジェクトを根本的に再考するきっかけになるだろうと語った。

「これは警鐘だ」と、メドベージェフは言った。BPの運命に関しこうも付け加えた。「ロシア政府は当然、BPの将来に関心を持っている。彼らが損失を吸収できることを願う」


 以前このブログで指摘したとおり、ロシア政府はBPと関係があるどころの話ではない。ロシア政府は何年も前から、BPとロシアの合弁石油TNK-BPを儲かる輸出ビジネスから締め出そうとしたり、非現実的に高い生産ノルマを課したりと、様々な嫌がらせを行ってきた。そしてそれはしばしば、ガスプロムに儲けさせるためだった。

■オバマはプーチンのアメリカ版?

 英エコノミスト誌は、バラク・オバマ米大統領の原油流出に対する対応を批判する記事のなかで、ロシアとメドベージェフの前任者を引き合いに出した


 BPの株価が急落したのは、オバマはウラジーミル・プーチン前ロシア大統領のアメリカ版だと市場が判断したからだ。つまり、企業に嫌がらせをして自分の言うことをきかせるタイプだ。


 これはちょっと言い過ぎだろう。オバマはまだ、新興石油会社のトップをシベリア送りにしたわけではないし、外資系石油会社の外国人幹部に対するビザ発給を拒んだこともない。だがBPのトニー・ヘイワードCEO(最高経営責任者)は今ごろきっと、メドベージェフがオバマにおかしな考えを吹き込まないよう祈っていることだろう。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年06月18日(火)15時03分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 21/6/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

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