コラム

ペルーで起きている大事件を見逃すな

2009年06月26日(金)03時06分

 イランの政治危機のさなか、あまり目立たない「革命」がペルーで起きている。国際的な注目度は低いが、ペルー国内と同国が世界経済で果たす役割に長期的な影響があるかもしれない。

 この2週間で、政府の土地改革計画に抗議していた先住民が計画を撤回させることに成功した。計画では、先住民の土地に外国のエネルギー会社が投資したり調査できることになっていた。

 先住民の抗議デモは6月上旬、警官隊との衝突に発展し、警官23人を含む50人以上が死亡した。政府は先住民の要求に屈し、首相が騒動をめぐって辞意を表明した。抗議運動の指導者は暴動をあおった罪で訴追された後、ニカラグアに亡命した。

■中南米に無関心なアメリカ

 アラン・ガルシア大統領は暴力に対する鈍感さと、抗議住民を自らのえさを守ろうとする「庭の番犬」に例えたことで批判を浴びている。ガルシアはこれまで、今回の開発計画は地元に経済的な恩恵をもたらすだけでなく、政府の関与を高めることによって不法伐採や麻薬密売を取り締まることができる手段と位置づけていた。

 今月はイランのニュースばかり報道されていたが、それは当然だろう。だが抗議行動によって警官23人が死亡し、多国籍企業に影響を及ぼす政府の重大決定が撤回され、さらに首相が辞任するというのは、かなり大きな出来事のように思える。もしこれがアジアか中東で起きていれば、アメリカの新聞でトップ記事になったに違いない。

 いつも思うことだが、米外交政策における中南米の重要性を考えると、中南米の出来事が(ウゴ・チャベスとフィデル・カストロに関するもの以外は)アメリカでほとんど話題にならないのは驚くべきことだ。ペルーの状況がほとんど無視されているのは典型的な例といえる。人種、金、暴力、麻薬は、いつからつまらない話題になったのか?

──ジョシュア・キーティング


Reprinted with permission from FP Passport, 29/6/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、日韓などアジア歴訪 中国と「ディ

ビジネス

ムーディーズ、フランスの見通し「ネガティブ」に修正

ワールド

米国、コロンビア大統領に制裁 麻薬対策せずと非難

ワールド

再送-タイのシリキット王太后が93歳で死去、王室に
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 2
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任務戦闘艦を進水 
  • 3
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元に現れた「1羽の野鳥」が取った「まさかの行動」にSNS涙
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 6
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 7
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 8
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 9
    アメリカの現状に「重なりすぎて怖い」...映画『ワン…
  • 10
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story