コラム

共和党はヘンな候補が続出!?

2011年08月31日(水)11時46分

 来年のアメリカ大統領選挙に向け、共和党の候補者選びが始まりました。現職のオバマ大統領に挑戦する候補者を正式に選出するのは来年夏の共和党大会ですが、その前に各地で開かれる党員集会や予備選挙で大会代議員を獲得する必要があります。

 その党員集会が全米で最初に開かれるのが、アイオワ州。来年2月です。でも、それを前に、共和党の正式候補になろうと意欲(野心?)を燃やす政治家たちが、続々と名乗りを上げ、早くもアイオワ州で支持を固めようとしています。

 8月14日にアイオワ州に姿を現したのが、現テキサス州知事のリック・ペイリー。その様子を、本誌日本版8月31日号は、こう表現しています(「大統領の座を狙うペリーの超単純思考」)。

「ペリーが勢いを得る可能性は十分にありそうだ。14日のパーティーでの態度は、選挙の戦い方を熟知した政治家の振る舞いだった。彼は出席者たちの顔をしっかり見ながら、時に抱きつかんばかりの様子で話をした」。

 おっと、ちょっとした政治家なら、誰だってする態度ですよ。日本の国会議員だって、この程度のことはするのだから。

 それはともかく、ペリーの言い分を聞いていると、不安になるのは確かです。FRBのバーナンキ議長の金融緩和政策を非難し、教育問題に関しては、「あなたの子供の教育に、連邦政府が口を挟むべきでないと思う」と言い切ったそうですから。どうも教育政策は存在しないらしい。みんな勝手にわが子を教育すればいい、というわけです。

 ここには書いてありませんが、ペリーは、「進化論」を否定する発言もしています。この世は神が創造し、人間も神が創ったのだから、サルの仲間が進化したなどという理論はたわごとだ、という立場です。

 ペリーの前に立ちはだかるのは、ミッシェル・バックマン下院議員。やはりアイオワ州で遊説を展開しました。オバマ政権で成立した医療保険制度を撤回することを求めています。「人々が汗水流して稼いだカネは、愚かな官僚たちの手に委ねられるのではなく、働いた人々の手許にもっとたくさん残るようになる----」(同誌「茶会の女王バックマンの実力」)。

 つまりは、連邦政府を縮小し、支出も削減。減税すべきだというわけです。

 こんな簡単な処方箋で世の中が解決すれば、苦労はいらないのですが、ひたすら単純で明快な発言(迷言?)で、有権者の心を掴む。ポピュリストぶりの競争になっています。

 でもねえ、こんな候補ばかりでは、アメリカの政治はどうなってしまうのでしょうかねえ。なに? アメリカの心配をする前に日本の政治を心配しろって? おっしゃる通りです・・・。

プロフィール

池上彰

ジャーナリスト、東京工業大学リベラルアーツセンター教授。1950年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学卒業後、NHKに入局。32年間、報道記者として活躍する。94年から11年間放送された『週刊こどもニュース』のお父さん役で人気に。『14歳からの世界金融危機。』(マガジンハウス)、『そうだったのか!現代史』(集英社)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日米韓が合同訓練、B52爆撃機参加 3カ国制服組ト

ビジネス

上海の規制当局、ステーブルコイン巡る戦略的対応検討

ワールド

スペイン、今夏の観光売上高は鈍化見通し 客数は最高

ワールド

トランプ氏、カナダに35%関税 他の大半の国は「一
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 10
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story