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「エレキ少年」が「中二病」を経て「科学の根底を支える守護者」になるまで──産総研計量標準総合センター・臼田孝
茜 計量標準の研究や業務に対して、世界と日本では重きを置く点や熱量の違いなどはありますか?
臼田 フランスはメートルの発祥の地ですよね。「自分の標準を世界に使わせる、使ってもらう」というのはある種の国家戦略でしたが、科学的に合理的で優れていたからこそ普及したわけで、まさにソフトパワーです。科学のフレームワークを作ったという自負を、フランスは今でも持ってると思います。
キログラムの再定義の時に感じたのは、ドイツは定義改定を「宇宙の摂理を解き明かす、人類の崇高なミッション」と哲学的に、アメリカは「国家安全保障の観点から見ても、当然、主体的に関わらなくては」と戦略的に受け止めていたことですね。
茜 日本はどうでしたか?
臼田 キログラム再定義の国際プロジェクトがスタートしたのは2004年なのですが、日本ではまず経産省に必要性を説明しなければならなくて、ご理解をいただくのに苦労したと当時の担当者からは聞きました。もちろんご理解いただいたからこそ貢献できたわけですが、日本も科学に対する本当の理解がもうちょっとあってもよいのではないか、と思いました。
茜 今や基礎研究は1つのラボ、1つの国でできるような時代ではなくなっていますものね。日本はまだ「文化としての科学」が醸成されていないのでしょうか。
臼田 諸国に追いつけ、追い越せの手段としての科学みたいなところから、まだ抜け出せていないような気がします。もう少し、科学がポピュラーになるといいですよね。たとえばこのカードには物理定数を基準とした7つの基本単位が書かれているんですが、もし現代文明が破滅的な状況になったとしても、測る基準が分かっていれば未来人は定量的に「我々の社会」を再現できるんです。
茜 人類滅亡後に宇宙人が来たとしても、かつての地球人を知ることができるんですね。先生、遠い未来まで残るように、石に刻んで産総研の前に置いておかなくちゃ。
臼田 ロゼッタストーンみたいにですか。磁気テープだと、読み取り装置がなくなっちゃったらダメだものね。つまり、物理定数を極めるということは、それだけすごいことなんですよ。


 




 
 
 
 
 
     
 
     
 
     
 
     
 
     
 
     
 
     











