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「エレキ少年」が「中二病」を経て「科学の根底を支える守護者」になるまで──産総研計量標準総合センター・臼田孝

左から産総研計量標準総合センター・工学計測標準研究部門長さ標準研究グループ・研究グループ長の堀泰明氏、同工学計測標準研究部門首席研究員(質量標準研究グループ兼務)の倉本直樹氏、今回インタビューに応じた同総合センター長の臼田孝氏 筆者撮影
<日常生活で量に疑いの目を向けることなく肉やガソリンを購入できる裏には、計量標準機関による知られざる尽力がある。日本における総本山である産総研計量標準総合センターで総合センター長を務める臼田孝氏に、計量標準の「意義」と自身の半生について語ってもらった。学生時代には「機械文明は人間を幸せにするのか」と思い悩んだこともあったというが──>
かつて国や地域、時代によってバラバラだった計量単位を統一する目的で作られた「メートル条約」。今年はこの国際条約が締結されてから150周年にあたります。
当初は長さ(メートル)と質量(キログラム)のみを定めていましたが、現在は、時間(秒)、電流(アンペア)、温度(ケルビン)、光度(カンデラ)、物質量(モル)を加えた7つの基本単位に発展し、国際単位系としてより洗練されたシステムになりました。
近年は基本単位の基準を物理定数とする定義変更が進み、特に2019年の「キログラムの再定義」では日本が最新の計測技術で貢献しました。
一方、各国の計量標準機関は、私たちの生活に大きく関わっています。計量標準とは「どの国の、どのメーカーの計測器を使用しても、1メートルは同じ1メートルであること」で、日常生活や商取引に安心を提供しています。
肉屋で300グラムの牛肉を、ガソリンスタンドで1リットルのレギュラーガソリンを、量に疑いの目を向けることなく買えるのは、店舗の計量器が適切な検査や校正を受けて保証されているからです。
「測ることとメートル条約」について掘り下げたインタビュー前編に続き、後編は、日本の計量標準の総本山である産業技術総合研究所(産総研)計量標準総合センター・総合センター長であり国際度量衡委員会幹事も務める臼田孝氏のこれまでの歩みを紹介しつつ、計量標準の「意義」と「日常生活との関わり」について語っていただきました。
【今回のテーマ】キログラム再定義と計量標準機関の役割
2019年、「1キログラムの決め方(定義)」が130年ぶりに改定された。「キログラム原器」という「物体のご本尊の質量」から、より高精度で安定性の高い物理定数を用いる方法に再定義されることになったのだ。2004年に立ち上がった国際プロジェクトでの各国の意識の違いから、日本の科学に対するスタンスを議論する。
さらに、日常生活で当たり前に「店が提供する計測値」を信じられる現状の背景に「計量標準と、それを守る人」がいることについても考察する。
■参考記事:メートルやキログラムが「普遍的な基準」になった日...7つのキーワードで学ぶ「メートル条約締結150周年と基本単位」