コラム

水とアルカリ薬品で遺体を分解する「アクアメーション」がスコットランドで合法化 日本で導入の可能性は?

2026年03月09日(月)13時25分

では、アクアメーションが日本で導入される可能性はあるでしょうか。

アクアメーション導入のカギとなるのは、主に「処理後の液体の扱い」と「宗教的・文化的慣習との折り合い」です。

たとえばオーストラリアのシドニーでは、葬儀業者がアクアメーション後の液体を下水道に流す許可を当局から得るのが困難だったため、植林地の肥料として利用したという例があります。

キリスト教文化圏では「死者の復活を妨げる」として、歴史的に火葬は推奨されていません。現在、ローマ・カトリック教会は「人体の神聖性や死者の復活の信仰を否定しない限り、火葬を認める」という見解ですが、アクアメーションに対しては意見が分かれています。米国カトリック教会では、米国ではアクアメーション後の液体が通常は下水道に流されることを理由に「人体に対する不必要な侮辱」という見解を強く主張する者もいます。

環境負荷の少ない葬送は他にも

日本では、国土の狭さや環境問題への関心の高さ、古来の自然崇拝などから、もしかしたら欧米よりもアクアメーションは受け入れられやすいかもしれません。一方、大切にしてきたものやお守り・お札を「お焚き上げ」するなど、火を神聖視して、別れの場面で浄化に用いきたという文化的背景もあります。

火葬よりも環境負荷が少ない葬送には、アクアメーションの他にも各国でユニークなものが開発されています。スウェーデン発の「フリーズドライ葬」は、遺体を液体窒素で凍結後に粉砕し、土中で分解される容器に入れて埋葬する方法です。イタリア発の「デンプンの棺」は、大きな種の形の棺桶を土中で分解されやすい植物のデンプンから作り、その中に遺体を入れて埋葬するとともに、その上に植樹して「遺体を土に還す」そうです。

日本の科学技術力で、日本文化を反映して心情にも寄り添うエコ葬、ハイテク葬が開発される日も近いかもしれませんね。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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