ニュース速報
ビジネス

アングル:日本株「底打ち」サイン、一部データが示唆 確信には距離

2026年03月09日(月)15時43分

3月9日、一時4000円以上の下落を示す株価ボード。REUTERS/Kim Kyung-Hoon

Noriyuki Hirata

[東‌京 9日 ロイター] - 日経平均は9日、一時4000円超下落し、市場では株‌価がいつ底値をつけるかに関心が寄せられている。過去の急落時に照らして​底打ちの兆しを示唆するデータが出始めているものの、現時点で確信を得られるまでには至っていない。

<日経VI先物にサーキットブレーカー>

この日注目されたのは、⁠市場の不安心理を示すとされる日経平​均ボラティリティー・インデックス(VI)だ。前週末も40台前半と高水準にあったが、一気に60台に上昇し、4日につけた64.21を上回って前場の終盤には一時66.65をつけた。イラン国営メディアが8日、死亡したハメネイ師の後継となる新たな最高指導者に次男のモジタバ・ハメネイ師が選出されたと報じ、原油先物が急騰。これを嫌気するかたちで日経平均の現物は一時4000円超安となって5万1000円半ばに急落した。

日経VIの先物が急伸したことから、取⁠引を制限するサーキットブレーカーが発動される場面もあった。この日の高値水準は、2025年4月に米相互関税が発表された後に相場が不安定となった当時の62.46を上回る水準となる。

大和証券の坪井裕豪チーフストラテジストは、⁠滅多にみな​い高水準だとして「悲観的なシナリオに基づく投資家のショートポジション構築は一巡した可能性がある」と指摘する。

坪井氏が着目するもう一つの指標は、市場全体の売りに占める空売り(信用売り)の割合を示す空売り比率だ。株価が下落する局面で上昇する傾向があり、相互関税発表後の急落時や24年8月の急落時には44ー45に高まった経緯がある。

前週には一時43まで高まり、週後半の続伸を経て41に低下していた。これが9日の下落を経て44以上に高まっているようなら「もうひとつの底打ちサインとみることができそうだ」(坪井氏)という。

<個人の信用評価損は過度に悪⁠化せず>

もっとも、日経VIは24年8月の急落時につけた85.38までまだ距離がある。株価の底打ちを見極めるに当たって‌必ずしも到達する必要はないが、織り込みはまだ不十分とみる向きもある。

年初来高値からの下落率では「過去の急落時の半⁠分程度となっ⁠ており、(下げは)道半ばにもみえる」とも大和の坪井氏は話す。24年8月の急落時は年初来高値から26%下落し、相互関税時は23%下落したが、今回はきょうの安値までに13%程度の下落にとどまっている。

株価下落時に注目される個人投資家の評価損益率の面からは、まだ底打ちサインはうかがえないとの指摘もある。

松井証券店内の評価損益率は、先週末時点でマイナス3.6%で、この日の下落を踏まえてもマイナス7―8%程度への拡大にとどまるのではないか‌と松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストはみている。

追い証が多発するとされる水準のマイナス15―20%に​距離があ‌るとみれば、底打ちは遠いとの判断もあ⁠り得る。「仮に、あすもきょうと同程度の下落となっ​て、日経平均が4万円台後半に下落するようなら、セリングクライマックスを迎えたと判断できるかもしれない」と窪田氏は話す。

<原油価格次第の相場は継続>

もちろん、データで底打ちが示されたとしても、重ねて悪材料が出るようなら株価の下押しは継続し得る。

目先は原油価格の動向次第との見方が優勢だが、長期化の様相が強まればリセッション(景気後退)懸念も高まり得る。原油高の陰に隠れる形となっているが、米雇用悪化やプライベートクレジット‌を巡る不透明感といったリスク要因もくすぶっている。

アセットマネジメントOneの浅岡均チーフストラテジストは、リセッションの織り込みはまだ十分に進んでいないかもしれないと指摘する。「原油の供給不安による経済​への悪影響が出てくるなど、一段の悪材料があれば株価には下⁠げ余地がありそうだ」と話す。

松井の窪田氏は、エネルギーのサプライチェーンが滞ることで電気料金が高騰するようなら、データセンターの収益性悪化への警戒につながり、AI(人工知能)関連株がけん引する株高のシナリオが崩れるリスクがあるとみる。

9日の午後には、主要7カ国(G7)​の財務相が、国際エネルギー機関(IEA)が調整する緊急石油備蓄の共同放出について協議すると英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じ、原油価格がやや落ち着いた動きとなった。

ただ、これで原油価格が本格的に落ち着くかは不透明と受け止められている。まずは新たなイラン最高指導者がどのような発言をするのか、それを受けた原油価格の動向がポイントになると、大和の坪井氏は話している。

ロイター
Copyright (C) 2026 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国、燃料価格に上限設定へ エネルギーショックから

ワールド

台湾行政院長のWBC観戦での訪日、中国が分裂主義的

ビジネス

中東情勢長期化すれば、スタグフレーションリスク=経

ビジネス

再送-〔アングル〕政策株解消で揺らぐ「岩盤」、物言
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ルートとは?...スクワットの真実
  • 2
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    「溶けた金属のよう...」 ヨセミテ国立公園で「激レ…
  • 5
    大江千里が語るコロナ後のニューヨーク、生と死がリ…
  • 6
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 7
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 10
    最後のプリンスが「復活」する日
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 5
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中