コラム

「悩んでる時もとりあえず頑張っておく」 油井亀美也宇宙飛行士に聞いた、若き日の苦悩と自分の選択を正解にする秘訣

2025年06月12日(木)12時35分

──油井さんも茶目っ気がありますものね。反対に違っているところ、補い合っているところはどんな部分ですか?

油井 かなり近いですからね、何でしょう......。一部違うとすれば、私は自衛隊のテストパイロットだったので少し硬い部分もあるでしょうし、大西さんは民間航空会社の出身で柔軟な考え方を持っているのではないかと思います。自分も大西さんのそういう部分から学ぼうとしています。


──最後に「待ち合わせ」つながりで、油井さんの滞在中にISSにやってくるかもしれない日本の新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」との待ち合わせへの思いを教えて下さい。前回ミッションでは先代の「こうのとり(HTV)」を日本人として初めてキャプチャしました。今回も宇宙輸送の新たな幕開けは、油井さんがロボットアームで掴むことによって始まる可能性がありますよね。

油井 皆さんご存知の通り、NASAの予算削減の可能性が言われています。決定ではないですけれど、そのニュースが来たときに真っ先に注目を浴びて、ISSの救世主になるかもしれないと思われたのがHTV-Xです。「NASAが補給機を送る予算が少なくなったらJAXAがそこを救ってあげる」というストーリーになる可能性も十分考えられます。

世界中から期待が高まっているのでチャンスでもありますが、重圧もあります。そこはしっかり成功させて、国際社会の期待に応えていきたいです。それを見た日本の人たちに「やったぜ! 日本はこういうことができるんだぞ、未来は明るいんだ」と思っていただいて、勇気づけることができたらいいなと思います。

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プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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