コラム

日本の宇宙開発にとって2024年は「実り多き一年」 イプシロンSロケット燃焼実験失敗とロケット開発の行方は?

2024年12月16日(月)12時00分

打ち上げコストの目標は非公表ですが、50億円前後だった従来型に対して、イプシロンSは30億円以下(消費税と安全監理費用を除く)を目標にしているとみられています。

ちなみに液体燃料ロケットのほうは、75年に日本初の実用衛星打ち上げ用ロケットの打ち上げに成功しました。名前は「固体燃料ロケットのK、Λ、Mに続くもの」の意味を持ち、さらに日本のローマ字表記の頭文字でもあるため「Nロケット」と付けられました。Nロケットの後継が、燃料である水素(元素記号H、英語Hydrogen)にちなんで名付けられた「Hロケット」で、現在はH2AとH3が活躍しています。

対策を講じて再試験

イプシロンSは、今年度中の初号機打ち上げに向けて各段の性能を確認するため、燃焼試験が進められていました。1段目と3段目の燃焼試験はすでに終了していますが、2段目は昨年7月にJAXA能代ロケット実験場(秋田県)で行われた試験で爆発が起きたため、対策を講じて今回、再試験が行われました。

前回の試験では、試験開始からおよそ57秒後に異常な燃焼による爆発事故が発生しました。事故原因についてJAXAは「点火装置の一部が熱で溶けて機体内部に飛び散り、圧力容器内の断熱材を損傷したため」と結論づけました。

爆発によって能代実験場はダメージを受けたため、今回はJAXA種子島宇宙センター(鹿児島)に場所を移しての再試験となりました。今回の試験では、モータ着火や燃焼および推進特性、断熱材の設計の妥当性などを確認した上で、打ち上げに向けた本格的な作業に進む見込みでした。

イプシロンロケットプロジェクトチームの井元隆行プロジェクトマネージャの説明によると、再試験では午前8時半から約2分間、エンジンを燃焼させる予定でした。しかし、点火後20秒ほどで燃焼圧力が予測値から乖離し始め、49秒で爆発が発生しました。爆発による人的被害はありませんでしたが、ロケットや実験施設の一部は損壊し、海まで飛び散ったとのことです。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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