コラム

宇宙でしてみたい実験は? 米田あゆさんと諏訪理さんに聞いた「宇宙飛行士」としての自覚と興味、AI観

2024年11月08日(金)20時00分

──米田さんはいかがですか?

米田 久留さんの言葉は、少しびっくりしました。先輩宇宙飛行士の方々からいろんなアドバイスをもらって、「少しでも先輩たちのようになれるように、一人前になれるように、必死に頑張って追いつこう」という感覚があったので、ユニット長からそういった言葉があったというのは、嬉しくもあり、同時に愛情を持っての期待感のある言葉だなと背筋が伸びました。「ここからさらに、これまでの宇宙飛行士にはなかった、新しい宇宙飛行士像を我々も作っていかないといけないな」っていう新しい気持ちが今、芽生えました。

宇宙空間での新しい実験っていうところで言うと、無重力では、体の筋肉とか骨とかが衰えて、老化現象に似たことが起こります。それはリスクと捉えられていたり、あとは宇宙空間での(強い)放射線のことがあったりするのですが、「宇宙空間は、良くないことが起こりうるから、それにどう対応していこうか」という目線での研究が、これまでは進んできたんです。

だから私は、「逆に、宇宙空間だからこそ、地球よりも人間の体にいい働きをすることってあったりするのかな」って考えてみたいです。微小重力もそうですし、今後、月や火星に行くときに、たとえば(月の)6分の1重力では、重力が小さいことで色々な体の変化っていうのがあると思うんです。分子的なレベルだったり、精神的な変化だったり、6分の1だからこそ動きやすいっていう側面もあったりすると思うので、宇宙環境をネガティブな高リスクな場所と捉えるんじゃなくて、宇宙空間でのポジティブな体の働きっていうのがどういうものなのかは非常に興味深いです。

また、そういったポジティブな面が見えてくると、地球では無重力は作り出せないにせよ、ポジティブさを活かすことはできないかっていう発想にもなってくると思います。

──面白いですね。宇宙空間というと、いつも放射線が強いとか、筋力衰えるとか、そんなことばっかり言われて、「宇宙で暮らすのは怖いのかな」という気がしてしまいがちです。米田さんらしい、すごく前向きで素敵な提案をしていただいて、わくわくしてきました。

米田 ありがとうございます。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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