コラム

発見された太陽系外惑星は5000個に 探査の歴史と究極の目的

2022年03月29日(火)11時20分

太陽の1000分の1の質量を持つ木星は「第二の太陽になり損なった星」と言われます。実際に「木星が80倍重かったら、恒星になっていた」と計算されています。SF作品でも、小松左京さんは「木星太陽化計画」がカギを握る作品『さよならジュピター』(徳間書店)を執筆しています。

これまでの太陽系外惑星の発見は、NASAの赤外線天文衛星スピッツァー(2020年に運用終了)、ケプラー宇宙望遠鏡(2018年に運用終了)、トランジット系外惑星探索衛星(TESS、2022年3月現在稼働中)などの貢献が大きいです。とくにケプラー宇宙望遠鏡は、確認された5000個の太陽系外惑星のうち、半分以上の約2600個を発見しました。

今後も引き続き太陽系外惑星探査が活発に行えるように、新しい宇宙望遠鏡も開発されています。

2021年12月に打ち上げられたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、観測波長を近~中間赤外線に特化して、従来よりも鮮明かつ感度良く観測できます。2027年に打ち上げる予定のナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡は、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡よりも短い波長の近赤外線の観測に特化して、太陽系外惑星を探すとともに宇宙のダークエネルギーやダークマターの謎にも取り組みます。欧州宇宙機関(ESA)が2026年に打ち上げる予定のケオプス宇宙望遠鏡は、一部の太陽系外惑星の大気組成も研究できると期待されています。

ティーガーデン星bの地球類似指数は0.95

太陽系外惑星は、数ばかりが注目されているわけではありません。究極の目的は、ハビタブルゾーンと呼ばれる、生命が存在かつ進化できる地球と似た環境下を作り出せる領域にある惑星を探すことです。

NASAの太陽系外惑星アーカイブを元にしたHabitable Exoplanet Catalogは、惑星が岩石で構成されているとみられ、表面に液体の水が存在する可能性が高いとされる半径が地球の0.5~1.6倍未満、下限質量が0.1~6倍の太陽系外惑星21個を「潜在的に居住可能な系外惑星の保守的な事例(Conservative Sample of Potentially Habitable Exoplanets)」として列挙しています。そのうち、最も地球に似ているとされるティーガーデン星bは、太陽から12.5光年に位置するティーガーデン星の周囲を公転する2019年に見つかった惑星で、地球類似指数が0.95(0~1で1に近づくほど地球に特性が似ている)と考えられています。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story