コラム

発見された太陽系外惑星は5000個に 探査の歴史と究極の目的

2022年03月29日(火)11時20分
太陽系外惑星

太陽系外惑星は、直接観測できることは稀(写真はイメージです) dottedhippo-iStock

<古くからSF作品のテーマになってきた太陽系外惑星だが、確証を持って発見されたのは1992年が初めてであり、その歴史は意外にも浅い。見つかっていない惑星は数千億個あるとされ、今後の活発な探査のために新たな宇宙望遠鏡も開発されている>

米航空宇宙局(NASA)は21日に「太陽系外惑星アーカイブ」を更新し、65個を新たに追加しました。これをもって、アーカイブに記録された太陽系外惑星は5000個の大台に達しました。

太陽系外惑星アーカイブは、査読付きの学術論文で確認された惑星を掲載しています。見つかった5000個の惑星のうち、4900個は地球から数千光年以内にあるものです。銀河系の中心は、地球から見て射手座の方向に3万光年離れた場所にあります。なので「銀河系内にはまだ見つかっていない惑星が数千億個あるはずだ」と、アーカイブで中心的な役割を担っている米カリフォルニア工科大学NASA太陽系外惑星科学研究所のジェシー・クリスチャンセンさんは語っています。

科学的な観測で発見されたのは30年前

太陽系外惑星は古くからSFの題材になってきました。1966年に始まった『スター・トレック』シリーズでは、地球の統一政府である「地球連合」が太陽系外惑星に住む異星人とともに「惑星連邦」を組織しています。日本語訳が2019年に出版されるとたちまちベストセラーになった中国のSF作家・劉慈欣による『三体』(早川書房)では、地球に最も近い恒星で太陽系から4.3光年しか離れていないケンタウルス座アルファ星系の惑星に高度文明が存在するという設定です。

けれど、科学的な観測によって太陽系外惑星が確証を持って実際に発見されたのは、たかだか30年前の1992年のことです。初めて見つかったのはパルサーPSR B1257+12と呼ばれる太陽から980光年の距離にある恒星の周りを公転する惑星で、2007年までにこのパルサーは3つの太陽系外惑星を持つことが分かりました。

太陽系外惑星の観測が始まった当初は、木星(地球の318倍の質量)の数分の1以下の惑星は見つけることができませんでしたが、徐々に海王星サイズ(地球の17倍の質量)やスーパーアース(地球の数倍~10倍程度の質量)と呼ばれる巨大な地球型惑星も検出できるようになりました。近年は、月の2倍程度の質量(地球の約40分の1の質量)の惑星も発見されています。

惑星も恒星も、宇宙空間に漂うガスや塵の集まった分子雲の密度の濃い部分が、万有引力によって収縮して塊を作ることで誕生します。塊の質量が太陽の10分の1程度以上になると、星の中心部は自己の重力で強く収縮されて高温高圧状態となり、水素からヘリウムが作られる核融合反応が始まって恒星となります。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ首都に夜通しドローン攻撃、23人負傷 鉄

ビジネス

GPIF、前年度運用収益は1.7兆円 5年連続のプ

ワールド

「最終提案」巡るハマスの決断、24時間以内に トラ

ビジネス

トランプ氏、10─12カ国に関税率通知開始と表明 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「コメ4200円」は下がるのか? 小泉農水相への農政ト…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 10
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story