コラム

Amazonが、AIを人間の親友にする?「Alexa Prize」に要注目。

2017年02月14日(火)14時47分

大半の専門家が「無理」と判断する中で、1社だけ成功すればそれこそがブレークスルー。雑談型を完成させた企業は、一気に覇権を握ることができる。

もし近い将来に雑談型を達成できるところがあるとするならば、Amazonではないかと思う。なぜなら巨額の賞金を提示して世界中の研究者を競わせることができるのはAmazon規模の企業しか無理だし、またAmazonはAI開発に必要なデータを、数百万台のEchoから大量に入手できるからだ。

ビジネスチャンスがあらゆる領域で出現

なぜAmazonは雑談型に挑むのか。それは、ボットとの雑談の中で、ユーザーの趣味嗜好を把握できるからだ。また雑談の中で商品をレコメンドすることができれば、最強の広告、マーケティング手法になると見られているからだ。

日本のロボットベンチャーの雄、ヴイストン株式会社の大和信夫氏は、ロボットが親友もしくは親友を超える分身のような存在になると指摘している。「間違いないです。断言できます。ソーシャルロボットは人間にとってプライスレスな存在になる。そうなればビジネスチャンスは無限」「ビジネスチャンスがあらゆる産業でいきなり出現する、という感じですね」と語っている。

もしAmazonのソーシャルボット・コンテストで、雑談型のAIが使用に耐えるほどの完成度になれば、Amazonは雑談型AIの普及に力を入れてくるだろう。

Amazonは、今既にタスク型AIをサードパーティに無料、もしくは低額で提供し始めている。雑談型AIも同様に無料もしくは低額でサードパーティに提供する可能性が高い。そうなればいろいろな形状のソーシャルロボットがサードパーティから発売されることだろう。

ヴイストンの大和氏を取材したのが2015年の夏。そのときに「3年後には、ソーシャルロボットの時代になる」と予測していた。

Amazonのコンテストで優勝者が決まるのが今年11月。早ければ2018年には、雑談型AIをサードパーティに提供し始めるかもしれない。実現すれば、大和氏の予測通りということになる。

11月に発表される優勝チームの雑談ボットがどの程度の実力なのか。注意深く見守っていきたいと思う。

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プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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