炎上時代にはびこる、あまりに軽薄な「させていただきます」表現
加えてコロナ禍で気になるのは、為政者たちの言葉の弱さだ。日本ではあれこれとしゃべらない「不言実行」が好ましいとされることは知っている。
しかし、この混乱の中でリーダーの言葉が頼りない、信用できない、理解しにくい、具体性に欠けるのは困りものだ。感染症への対応が遅れたのはおくとしても、リーダーの言葉は今年になってもずっと曖昧だ。「~したいと思います」「~しましょう」「~お願いしたい」──どれもとても弱い言葉だ。嫌われないように、反発を受けないように、慎重に言葉を選んでいるのだろう。
しかし、リーダーの責務は嫌われないことではない。人々をリードし、問題を共有すること。ゴールを示し、タスクを振り分け、実行すること、時に勇気づけることだ。そのための強い意思と決意は、それらの弱い言葉には感じられない。なんだか嵐が過ぎ去るのを待っている人の言葉のようにしか聞こえない。
リーダーや有名人が批判を恐れておざなりな言葉遣いをすれば、人々の言葉も軽いものになる。心のこもっていない、真実を語らない、信じるには足りない言葉。私の大好きな日本語がそんなつまらない言葉になってほしくない。
石野シャハラン
SHAHRAN ISHINO
1980年イラン・テヘラン生まれ。2002年に留学のため来日。2015年日本国籍取得。異文化コミュニケーションアドバイザー。シャハランコンサルティング代表。YouTube:「イラン出身シャハランの『言いたい放題』」
Twitter:@IshinoShahran
2024年6月18日号(6月11日発売)は「姿なき侵略者 中国」特集。ニューヨークの中心やカリブ海のリゾート地で影響力工作を拡大する中国の「ステルス侵略」
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
日本人の「自由」へのこだわりとは?...ジョージア大使が考える「共通点」と「相違点」 2024.06.13
少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由? 2024.05.26
岸田首相は「国民の命を守り抜く」といつも言うが、本気なの? 2024.05.18
「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの文化」をジョージア人と分かち合った日 2024.05.11
大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「ボス」になれないことだ 2024.04.25
便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること 2024.04.18