コラム

「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの文化」をジョージア人と分かち合った日

2024年05月11日(土)09時00分
ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)
卒業式

DANIEL BEREHULAK/GETTY IMAGES

<日本ではなぜ「最後」がこれほどに大切にされているのか。ジョージア人が「ユーロ2024」で大泣きした理由と「最後」の深い意味について>

3月26日、サッカー・ジョージア代表は今年の欧州選手権(ユーロ2024)の予選プレーオフ決勝でギリシャ代表を下し、本大会初出場を決めるという歴史的快挙を成し遂げた。

ジョージアはもともとスポーツ大国であり、かつてソ連代表として多くのジョージア人が活躍していた。最近では、アメリカの総合格闘技の最高峰UFCでのジョージア人ファイターや、日本の大相撲での元大関・栃ノ心などジョージア人力士の活躍は皆の知るところだ。

しかし、スポーツの強さは国の安定と無関係ではない。特にチームスポーツはその傾向が顕著になる。それは国家がいかに選手を財政面でサポートできるかに依存するからだ。そのためソ連崩壊後にジョージアはチームスポーツで苦しんできた長い歴史がある。

そんななかで2003年にラグビー・ジョージア代表がワールドカップ(W杯)初出場を果たしたことは国民を鼓舞した。それから20年後の23年には、バスケットボールの男子代表がW杯の出場権を勝ち取り、沖縄で開催された2次ラウンドに進出した。

なかでもユーロ初出場はジョージア国民の悲願だった。というのも、他のヨーロッパ諸国と同様に、サッカーは国民的スポーツだからだ。だからこそ、サッカーで世界大会に出場できないことは「国民の悩み」でもあった。

私も「ジョージアはサッカーは強いのですか?」と聞かれるたびに、顔を赤らめて「強い選手もいます」とお茶を濁すのが精いっぱいだったほどである。

そんなジョージア代表とサッカーファンを支えてきた応援歌がある。ジョージア人歌手メラブ・セパシュヴィリによる「ガイギメ(笑顔見せて)」という曲で、ジョージア人であれば誰もが一度は耳にしたことがある。

その曲のサビに「物語(ゆめ)の最後には優しさがくる(ზღაპრის ბოლო კეთილია〔ズガプリス ボロ ケティリア〕)」というフレーズが出てくる。

日本語への直訳では詩的すぎるが、ジョージア語でも日常会話では使用しないこの表現は、「あなたのために歌っています。あなたと一緒です。決して怖がらないで。物語(ゆめ)の最後には優しさがくる。ほほ笑んで」という前後も合わせて聴かないと文脈が見えない。

では、なぜジョージア人がこの歌詞に感動するのか? 

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国万科の社債権者、返済猶予延長承認し不履行回避 

ビジネス

ロシアの対中ガス輸出、今年は25%増 欧州市場の穴

ビジネス

ECB、必要なら再び行動の用意=スロバキア中銀総裁

ワールド

ロシア、ウクライナ全土掌握の野心否定 米情報機関の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 10
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story