最新記事

BOOKS

攻撃的な自分の上司が、ネット炎上の参加者かもしれないこれだけの理由

2020年10月23日(金)11時25分
印南敦史(作家、書評家)

Newsweek Japan

<ネット上で、あるいは自粛警察として「正義を振りかざす」人はどんな人なのか。データ分析から分かったのは、ネットに没頭する暇な人ではなく、「男性」「年収が高い」「主任・係長クラス以上」という傾向を持つ人たちだった>

SNSやネットニュースなどのコメント欄で、罵詈雑言のたぐいを目にすることは決して少なくない。つまり、炎上させたり、あるいは炎上に参加して、赤の他人を攻撃してしまう相当数の人がいるということだ。

それらはネットを利用していれば否応なしに目に飛び込んでくるだけに、もはや見るのを避けるほうが難しいとすら言えるかもしれない。『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(山口真一・著、光文社新書)の著者も、本書の冒頭でそのことに触れている。


 このような炎上は日常的に耳にすることが増え、「特別な現象」ではもはやなくなってきた。Webリスクについて調査・コンサルをしているデジタル・クライシス総合研究所によると、2019年の炎上発生件数は、年間1200件程度であったようだ。一年は365日しかないので、一日当たり3回以上、どこかで誰かが燃えているのが現実といえる。(「はじめに」より)

しかもそれはネットだけの話ではなく、「極端な人」はさまざま場所に存在している。例えばそのいい例が、少し前に問題視された「自粛警察」だろう。

緊急事態宣言が発令されるなか、外出や営業の自粛要請に応じない個人や店舗、企業などに対し、「通報する」「中傷ビラを貼る」「電話をして暴言を吐く」「ネットで攻撃する」などして"私的な取り締まり"をする人たちのことである。

「自粛警察」出現の発端となったのは、言うまでもなく新型コロナウイルスの流行だ。姿の見えないウイルスが社会全体に不安を与えた結果、常に人々がストレスを抱えるようになった。そして、それが他にもさまざまな"理由"をつけて火を放つ人の数を増やしたというわけだ。


 人々はどのように対策をしたらよいのか分からないにもかかわらず、漠然とした不安を抱え続ける。そのような状況で、「悪者」を見つけて自分の中の正義感で批判をすることで、不安を解消して心を満たそうとするのである。脳科学の分野では、正義感から人をバッシングすることで、快楽物質「ドーパミン」が出るとも言われる。(87~88ページより)

では、「極端な人」とは具体的にどのような人たちなのだろうか? そう問われたとき、「暇を持て余し、常にネットに没頭している、どちらかといえば社交性の低い人たち」というような印象を抱く人は少なくないはずだ。

しかし、そんな捉え方を著者は否定する。彼らはどこか遠いところの人ではなく、実はすぐ近くにいるというのだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中