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韓国社会

韓国版「働き方改革」にイエローカード? 炎天下での長時間労働でドラマ撮影スタッフが過労死

2018年8月10日(金)17時14分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)


SBSドラマ「三十ですが十七です」はオンエアに合わせ夏の屋外シーンが多く、撮影も炎天下で行われている。 KOCOWATV / YouTube

文大統領の肝いりで労働時間短縮を始めた矢先......

韓国のニュースによるとAさんは死亡する直前まで毎日13時間から20時間働いていたと報道されている。この問題に対し、全国メディア労働組合は2日「放送局の撮影現場における労働者保護のため、猛暑を含む過度な野外労働についてこれから監督していく」と発表した。

韓国は昔から長時間労働が社会的な問題で、OECD加盟36カ国のうち、メキシコに次いで年間労働時間が長く、生産性の低さが指摘されてきた。とりわけメディア業界は、昔からスタッフの労働条件の劣悪さが問題視されてきた。そんななかにあって、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の肝いりで今年7月から執行された「改正勤労基準法」は、国や地方自治体、そして従業員300人以上の企業を対象に最大労働時間を週52時間に短縮した。

この法執行に伴い、広告、映画、放送などの現場撮影スタッフなどから週末勤務や夜間勤務などについての問い合わせが多く寄せられたという。一般的な企業とは違う変則的で長時間の勤務が多い業種だからだろう。

その問い合わせの多さに韓国の文化体育観光部(日本の文部科学省に相当)は、コンテンツ事業の労働時間短縮についての公開討論会を開催した。討論会には映画、放送、アニメーション、広告、ファッション、ゲーム、漫画など、多様なコンテンツ事業者が参加した。この討論会の目的は新しい勤労基準法の周知と理解を求めるためのものだった。多くの現場スタッフが撮影時のスタッフの待遇改善について期待をし、この新法案を好意的に受け入れていたが、一部では反対意見も上がった。

「現実的に考えて韓国のコンテンツ制作システムは何時から何時までという定時では区切れない。これに無理やり時間設定をすれば、コンテンツの質が全体的に低下する恐れがある」「残業や休日、夜間手当などの追加人件費が高騰するため、高給取りのベテランスタッフの代わりに安く雇える経験不足の新人が大量採用され、これも質の低下に繋がっていくだろう」という懸念の声だ。韓国映画プロデューサー組合の代表は週52時間制度導入により人件費予算が20.3%上がるだろうと発表した。また、それに伴い全体の制作費が平均15〜20億ウォン(約1.5〜2億円)アップせざるをえないだろうという声も上がっている。

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