最新記事

韓国社会

韓国版「働き方改革」にイエローカード? 炎天下での長時間労働でドラマ撮影スタッフが過労死

2018年8月10日(金)17時14分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

クリエイティブの質が低下?

テレビや映画の撮影現場では、照明チームや美術チームは本番前の準備や後片づけをする時間が必要だ。これも52時間に含まれるとなると現実問題として仕事ができなくなってしまう。そこで検討されているのが、スタッフの人数を増やし、4名ずつ2チームを作り、4人+4人体制で順番に休憩を取って撮影していくシステムだ。撮影3時間前に先発チームが現場で準備をし、本番は後発チームが現場に入るのだ。特に、時代劇の場合は現代劇よりも3割も準備に時間が長くかかるため、このシステムが導入される可能性が高い。

一方では、製作会社は劇場公開作品の目安とされる製作費50億ウォン(約5億円)以上の作品を新人監督に任せる可能性は低いため、スタッフ増により全体的に製作費などがアップした場合、新たな才能が世の中に出て行くチャンスが減ってしまうだろうと予想される。また、映画の製作費を削減する為、取り上げるジャンルやビジュアルの作り込みを制限してしまう制作会社も増えそうだ。映画の多様性が制限されてしまったり、若い監督や俳優たちのチャンスが減ってしまっては、これまで勢いのあった韓国映画界の未来は暗い。

とはいえ、今回のようにスタッフが過労死してしまうような過酷な労働条件のままで制作を続けていても結果は同じだ。今まで一体どれくらいの人たちの犠牲的な労働の上に作品が作られてきたことだろうか。まだ改正勤労基準法の52時間制が執行されて2か月も経っていない。今は混乱している現場だが、長い目で見れば徐々に定着していくだろう。「寝れない・休めない・重労働」などという撮影現場のネガティブなイメージがいつの日かなくなっていくことを願っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中