南シナ海、中国は「アメとムチ」で実効支配を増大
譲歩する姿勢を見せているとはいえ、この水域での中国のプレゼンスは増大している。海警局の艦艇と漁船で構成される船団の規模は、昨年末の衛星画像によって確認された数からさらに拡大している。
こうした動きにフィリピン政府は懸念を募らせている。フィリピンの排他的経済水域内にあるスプラトリー(南沙)諸島に人工島を築き、要塞化した中国が、スカボロー礁においても同じような野心を持っているのではないかと疑念を抱いているのだ。
平和的共存
スカボロー礁は水面にようやく頂点を出している岩からなる、1辺46キロの三角状の環礁で、フィリピン・中国両国の船舶は、そこから100メートルも離れていない場所に並んで投錨しており、両者のあいだには平和的な共存が見られる。
麦わら帽子をかぶった中国人が漁船のあいだを行き交い、フィリピン人と身振り手振りを交わしつつ、煙草や酒と魚を交換している。
小型漁船はブーンとエンジン音を響かせ、サンゴ礁が作る天然の消波堤を抜け、環礁内の水域を出入りする。何世紀も前から漁師たちに豊富な漁獲と嵐からの避難所を提供してきた場所である。
老朽化した手狭な漁船に乗ったフィリピン人漁師たちは、数のうえでは約10倍と優位にある、増強された中国船団との競争に不満を漏らす。
「以前は数日間、漁を行っていたが、今は数週間だ。少なくとも、ある程度は魚を獲れる」と語るのは、20年にわたり漁業を営んでいる漁船の船長ラミル・ロザルさん。
「中国人はもっとたくさん獲っている。フィリピン漁船は彼らと魚を分け合わなければならない。だが、彼らが特に迷惑ということはない。親切な人たちもいる」