南シナ海、中国は「アメとムチ」で実効支配を増大
オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、すべての国に開かれた伝統的な漁場だと判断したスカボロー礁付近の水域だが、ここでは中国海警局の艦艇数隻が自国ルールを強制している。同裁判所は、環礁の領有権については判断を下していない。
フィリピンのマナロ外相は、フィリピン漁船にとってのアクセスが改善されたことは「もちろん常設仲裁裁判所の裁定に沿ったもの」だと話している。
厳重な監視体制
ロイターが漁師たちに取材したところ、中国海警局の艦艇は、大型漁船が環礁内に入ることは禁じているものの、2人乗りの小型漁船であれば環礁内で自由に漁ができるという。
「中国漁船にもフィリピン漁船にも同じルールが適用されている」とロザル船長は言う。
見慣れぬ船舶がこの水域に近づくと、監視のため強力なエンジンを備えたボートが大型の艦艇から発進することがある。
昨年のフィリピン政府からの発表によれば、海警局の艦艇のうち3隻は水の底の土砂を取り去る能力を有する艦種だったという。そのうち1隻は環礁内に常駐していたが、その行動内容は明らかではない。
ロイター取材陣が中国漁船に横付けしてみると、海警局が中国の漁師たちと連携していることが分かった。
漁船員の1人は急いで携帯無線を手に取り、記者たちの写真を撮影した。まもなく海警局の艦艇が針路を変え、こちらに向かって急速に接近してきたが、短時間追尾しただけで引き返していった。
ロイターは中国外務省にスカボロー礁に関する質問を送ったが、ただちに回答は得られなかった。同省の最近のコメントは曖昧で、スカボロー礁の状況に変化がないことを述べているだけだ。
フィリピンの漁師たちは、ベトナム漁船もスカボロー礁で漁を行っており、それはベトナム政府が中国政府による新たな措置を試している兆候だと語った。
とはいえ、ロイター取材陣はベトナム漁船を1隻も目撃しなかった。またベトナムの2つの漁業団体は、自国漁船がスカボロー礁に向かったことを把握していないと述べた。ベトナム政府からの回答は得られなかった。
スカボロー礁をめぐる状況は改善されているとはいえ、緊張は残っている。