最新記事

インタビュー

歴史感を伴った根拠なき自信を持て

2016年7月22日(金)16時03分
WORKSIGHT

 働いている人たちもそこで一生懸命働けば自分も儲かるし、やりがいも追求できるし、世の中からも尊敬される。「あの人はグーグルでこんなにいい仕事をしているんだ」「アップルでこんなにいいものをデザインしたんだ」と言われるわけです。

 そういう意味で仕事がプライベートな喜びだけでなくソーシャルな喜びにつながっていることが重要です。極端にいえば、うまく行っている会社は宗教に近い。この会社が大きくなるのは社会にとっていいことだというような集団であり、実際そういう会社がイノベーティブな商品やサービスの開発に成功し、業績を上げているのです。

wsSugatsuke_2.jpg

生活に不可欠な製品やサービスを提供するインフラ企業はますます巨大化

 消費者の物欲が低下しているというと、大量生産・大量消費を導いてきた大企業は行き詰まるのではないかと聞かれることもありますが、僕は全然そうは思っていません。むしろ大企業はますます大企業になると思います。

 例えば、僕を含めてアップルの製品を使っている人は多いし、どんな情報を得ようとするにもグーグルがないと不便ですよね。言ってみればアップルやグーグルはインフラ企業になりつつあるということ。電力会社やガス会社と同じで、ないと困ってしまう存在になった。日本でもトヨタやソフトバンクなどはこれに当てはまるでしょう。そういう巨大企業はますます大きくなると思います。

 翻っていえば、大衆は大きい企業がより大きくなることを期待しているということです。いまあるインフラをより盤石で便利なものにしてもらいたいし、例えばグーグルが実験している自動運転カーだって早く実現してほしいと心の中で思っている。それが自分の生活の利益になるからです。社会の要請も追い風になって、大きい企業はより肥大し安定していくわけですね。

規模のビジネスを追求するか、強いニッチを目指すか

 問題は中規模な会社がどうなるかですが、巨大企業がますます超巨大化する一方で、小さいインディペンデントな工房のような会社もいっぱい生まれてきます。消費者が本当にほしいと思う良質なモノを作るメーカーは、規模が小さくても活路があると思います。**

 大企業と小さなメーカーの関係は、有名デパートとデパ地下の小売店に似ているかもしれません。三越や伊勢丹のようなブランド力のある大きなデパートは生き残るでしょう。その地下の食品売り場で、職人が手作りするような、業界内でも秀逸な品を扱う店は行列ができるほど人気を集めると思います。でも、売上の芳しくない惣菜店や菓子店は売り場から姿を消していく。

 そんなふうに、それぞれのジャンルで巨大なインフラ企業が1社、あとは補完的な中小規模の企業がいくつか生き残るというような生態系になってくると思います。規模のビジネスを追求するか、強いニッチを目指すか、企業は方向性の決断を迫られることになるでしょう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中