最新記事

ヘルス

驚きの事実「歯磨きに虫歯予防の効果なし」 虫歯を減らす2つの方法とは?

2021年5月23日(日)11時28分
山本 龍生(神奈川歯科大学大学院歯学研究科教授・歯学博士) *東洋経済オンラインからの転載

最も効果的な虫歯予防法は「フッ素」

歯ブラシによる物理的な歯垢除去によるものではなく、歯ブラシでフッ素を塗ることで、むし歯予防効果が表れていたのです。

最も効果的なむし歯の予防法は、フッ素を使うこと。フッ素には、むし歯の初期に起こる、歯から唾液中に溶け出したカルシウムやリンを元の歯に戻す効果があります(再石灰化作用)。また、口の中の細菌の増殖を抑える作用や、歯のエナメル質に働いて酸に溶けにくくさせる作用もあります。

歯ブラシは、歯垢を落とす道具ではなく、歯にフッ素(フッ素入り歯磨剤)を塗る道具なのです。このことは、世界保健機関(WHO)が監修した、むし歯予防の本にも明記されています。

歯科を受診し、むし歯の部分を削って金属や樹脂などの材料を詰めてもらったら、「治してもらった」と患者としては思います。しかし、実際は「治して」はいません。治療は終わりではありません。むし歯で失った歯の部分を、金属や樹脂など歯とはまったく異なる材料で置き換えただけといえます。

歯と詰めた金属や樹脂などの境目には、接着剤があります。その接着剤は時間とともに劣化して、唾液の中に溶け出したり、剥がれ落ちたりして失われ、やがてすき間ができます。そのすき間にむし歯菌が繁殖し、酸によってまた歯が溶かされ、次のむし歯ができてきます。

食生活など生活習慣が同じなら、たいてい5年以内に再治療が必要になります。また、口の中は、温度差が激しい過酷な環境です。熱いお茶やラーメンは60度以上ありますし、アイスクリームはマイナス10度以下です。これだけで70度以上の温度差があります。金属は熱くなると膨張し、冷たくなると収縮します。

歯の主成分は、詰めた金属ほどは温度によって変化はしないので、温度による変化の少ない歯と変化の大きい金属との境目では、温度変化によるひずみが生じます。そのひずみができた場所で接着剤が剥がれるなどして、すき間にむし歯菌が入り込むのです。

しかも、前述したように、このすき間には、歯ブラシの毛先は入らず、歯ブラシでこすってもむし歯菌を取り除くことはできません。その結果、新たなむし歯ができやすくなります。

つまり、むし歯になったということは、むし歯菌によって酸が作られやすく、歯が溶けやすい環境ができているということです。単に穴があいた歯の部分を別の素材で補ったとしても、同じようなむし歯ができる状況は変わっていません。

「むし歯を減らす」たった2つの方法

books20210521B.jpgむし歯ができないためには、むし歯ができる環境を根本的に改善する必要があります。そのための一番の近道が、砂糖を摂る頻度が高い人は、その頻度を減らすことです。

また、長い間、歯に詰め物をしていたり、歯の根が露出したりして、むし歯のリスクが高まっている人なら、フッ素入り歯磨き剤を使うことです。この2つを実践するだけでも、むし歯になるリスクは一気に低くなるのです。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ

ビジネス

再び円買い介入観測、2日早朝に推計3兆円超 今週計

ワールド

EUのグリーンウォッシュ調査、エールフランスやKL

ワールド

中南米の24年成長率予想は1.4%、外需低迷で緩や
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中