最新記事

自動車

液晶テレビ、スマホの次はEVか 韓国EVが欧州で急速にシェアを広げる理由

2022年3月10日(木)18時31分
さかい もとみ(ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載
韓国ヒョンデのEV「IONIQ 5」

ロンドン西郊外のHyundai(ヒョンデ)ディーラーには、納車待ちの「IONIQ 5」(左)が停まっていた(撮影=筆者)

欧州でフォルクスワーゲンの牙城に食い込む

韓国の自動車メーカーの電気自動車(EV)が欧州で絶好調だ。Hyundai(ヒョンデ)や同社グループ系列のKia製を中心に破竹の勢いでシェアを広げ、「自動車業界、驚きのシャッフル」「韓国EV、テスラよりも売れそう」と伝える記事さえも出てきた。

韓国車に馴染みが薄い日本のユーザーにとっては「なぜ?」という疑問が湧くかもしれない。実際のところ欧州でも、韓国製のクルマの存在感は2021年に入るまでそれほど大きくなかった。

欧州全体では、独フォルクスワーゲン(VW)が圧倒。フランスやイタリアでは、自国の自動車メーカーが幅を利かせ、自国とその周辺の購買者が持つ「愛国心」に訴えながらシェアを確保してきた。一方、日本や韓国のメーカー各社は米国ではそれなりのシェア獲得に成功してきたが、欧州では「存在自体は知られている」ものの、欧州メーカーと比べるとそこまでのシェアは取れずにいた。

しかし、そんな業界図に変化が生じている。英国における2021年のEVモデル別販売台数では、「Kia e-Niro」がフォルクスワーゲン「ID.3」を上回り2位につけた。登録台数は前年同月比でヒョンデが81.5%増、Kiaが67.5%増と、日本メーカーがいわば足踏み状態にあるEV市場で、英国や欧州市場で地位を築きつつある。

新型「IONIQ 5」が北米、欧州で発売

ヒョンデの「IONIQ」は、環境車としてすでに各国の市場で着実に販売実績を上げていた。2016年の初代IONIQは、同じプラットフォームを使ったEVとプラグインハイブリッド(PHEV)がある。日本では販売当初から「トヨタのプリウスに酷似」という批評も聞かれるが、HEV車としてプリウスが不動の地位を築いている欧州では、IONIQとプリウスを混同する声は聞いたことがない。

新型の「IONIQ 5(アイオニック・ファイブ)」は、2019年のフランクフルトモーターショーでお披露目されたのち、2022年に入ってから北米と欧州市場に本格登場した。ボディデザインは、韓国の独自生産車として普及した「ポニー」を踏襲したとするものの、実車を見ると薄いヘッドライトとクラムシェルフードのフロント形状が印象的だ。

後述するが、このIONIQ 5は日本でも5月に発売される。最低価格は479万円(金額は税込み、補助金など含まず)。

「後発EV」がどうやってシェアを広げたのか

後発EVにもかかわらず、韓国メーカーはいかに欧州マーケットに食い込んだのか。まず、Kiaがスロバキアに2004年、続いてヒョンデがチェコに2008年、いずれもかつての東側陣営に製造拠点を建てた。ここを拠点に安価な労働力を使って欧州全体に販売を図った。VWなどの小型車に比べて廉価だったものの、個人購入よりもむしろレンタカーやリース向けといった「フリート販売」で実績を積んでいった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中