コラム

チョコ好きを待ち受ける「甘くない」未来...「カカオショック」が長期化するとみられる理由

2024年04月10日(水)12時10分
チョコレート

チョコレートの主原料カカオ豆の価格はこれまであまり変化してこなかった(写真はイメージです) Sergio Rojo-Shutterstock

<カカオ価格は1年間で3倍以上に。カカオショックの背景には3つの理由があげられる>


・カカオ豆の国際価格は急激に上昇していて、今後チョコレート価格もこれに引っ張られる公算が高い。

・カカオ豆の主要産地である西アフリカでは、地球温暖化による異常気象をきっかけに生産量が減少している。

・さらに生産者にとって利益の上がりにくい構造や投資家による過度な資金投入もあり、カカオ価格の高騰は長期化する見込みが大きい。

チョコレートの主原料カカオ豆の歴史的高騰はスイーツ好きにとっての悲報であるだけでなく、世界の変動の一つの象徴でもある。

やってきたカカオショック

世界各地でインフレはなかなか収まらないが、そのなかでもカカオ豆は多くの商品を上回るペースで値上がりしている。例えば米NASDAQでは4月1日、終値が1万ドルの大台を突破して1トンあたり10,120ドルを記録した。

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これは約1年前の2023年3月31日(2,933ドル)と比べると3倍以上で、カカオショックとでも呼ぶべき急激な値上がりだ。

このカカオ高騰は当然チョコレートの価格にも影響してくるだろう。

もともとウクライナ戦争が始まった2022年初頭から、チョコレートはその他の多くの商品と同じように値上がりしてきた。

ただし、その間も主原料であるカカオ豆の価格はあまり変化していなかった。

そのため、これまでのチョコレート値上がりはカカオ以外の原材料(原油や植物油など)の高騰だけを反映していたといえる。

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とすると、カカオの歴史的高騰でチョコレートはこれまで以上のペースで値上がりすると予想される。

日本はカカオショックの影響が大きい国の一つといえる。World Population Reviewによると、日本の年間チョコレート消費量は一人当たり平均1.2kgで、世界第20位(ブラジルと同率)だが、チョコレート文化の根付いた欧米以外では第1位にあたる。

なぜカカオが急騰したか

カカオショックの背景には主に3つの理由があげられる。

①異常気象による農業被害

まず、地球温暖化による異常気象だ。

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世界のカカオ豆生産の約7割は西アフリカ地域が担っていて、特にコートジボワールとガーナの2カ国だけで世界生産の半分以上を占める。

その西アフリカでは年を追うごとに平均気温が上昇していて、今年2月中旬には40度を超える日が5日以上続いた。また、熱波の影響で干魃や大雨も増えている。

こうした異常気象で農業被害は増えていて、西アフリカ諸国ではこの数年カカオ生産量が減少している。地球温暖化が引き金で生産量が減少し、価格が高騰した点ではオリーブやバニラと同じだ。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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