コラム

日本海、エネルギーが熱い。メタンハイドレート、ロシアパイプラインの可能性

2016年02月01日(月)17時30分
日本海、エネルギーが熱い。メタンハイドレート、ロシアパイプラインの可能性

ウラジオストクから新潟までの海底パイプラインが繋がる可能性はあるのか? 写真はロシア-欧州をつなぐ「サウス・ストリーム」パイプライン Sergei Karpukhin-REUTERS

 日本海でエネルギーをめぐる新しい動きがある。メタンハイドレートの存在とロシアからのパイプライン構想の2つだ。これらは日本経済とエネルギーの安全保障を劇的に変える可能性を持つ。

 メタンハイドレートは、メタンと水が低温・高圧の状態で結晶化した物質だ。ガス資源として期待されている。1月24日に、経産省・資源エネルギー庁が、これまで太平洋岸の深海で確認されたメタンハイドレートが、日本海側を含めて717カ所で見つかったと公表した。日本近海の埋蔵量は、かなり大きなものであることが確認された。

 メタンハイドレートは1990年ごろから調査と利用の検証が始まった。2012年には、日本海での資源開発をめぐり、新潟県など10の自治体が「海洋エネルギー資源開発促進日本海連合」を立ち上げている。

 もう一つのロシアからのガスパイプライン構想は、以前から浮かんでは消えていた話だが、ここへ来てロシア最大のガス会社ガスプロムなどが、日本に打診しているもようだ。15年6月に都内で行われたシンポジウムでは東京ガスの幹部が出席し「現時点で実現するとは考えていないが、負担が合理的になれば検討すべき」と、問題提起した。

 日露パイプラインの費用は、試算ではガス田のあるサハリンから日本の関東地方まで、総延長が約1500~2000キロ、総工費は最低で35億ドル(約4130億円)という。パイプラインの開設で、東日本のガス価格は現在の半分以下になると見込まれる。

 ロシアは原油価格の急落で、経済が窮地に陥っている。シベリア開発は急務だ。政府の統制下にあるロシアのメディアは、最近、パイプライン構想が浮上と、しきりに報道するようになっている。また新潟県が調査費用を計上し、ウラジオストクから新潟までの海底パイプラインの可能性を探っている。

 現在、日本の天然ガスは、オーストラリア(20%)、カタール(18%)、マレーシア(17%)から輸入しているが、ガスを低温で冷やして液化して特殊な運搬船で運ぶためコストがかかっている。さらに福島第一原子力発電所事故後、原発の再稼動が遅れ、代替燃料ガスを大量に輸入し続けている。そのコスト低下が必要になっている。

日本の制約条件が変わる

 これまで日本のエネルギー政策は、ほぼ無資源国で、国外のエネルギー資源の確保や輸送に軍事力を使えないという制約を受けてきた。ところが、メタンハイドレートは自前の資源で、パイプラインからのガスは海路を運搬せずにすむ安定資源となる。これら2つの動向は、日本のエネルギーの前提条件を大きく変える可能性を持つ。

プロフィール

石井孝明

経済・環境ジャーナリスト。
1971年、東京都生まれ。慶応大学経済学部卒。時事通信記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長を経て、フリーに。エネルギー、温暖化、環境問題の取材・執筆活動を行う。アゴラ研究所運営のエネルギー情報サイト「GEPR」“http://www.gepr.org/ja/”の編集を担当。著書に「京都議定書は実現できるのか」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞)など。

ニュース速報

ワールド

焦点:脱石油と強硬外交、サウジの変革担う新皇太子の

ビジネス

日経平均は3日続落、値がさ株や大手通信株の下落が重

ビジネス

焦点:早さより味重視、マクドナルドが賭ける生肉使用

ワールド

EU首脳会議、欧州防衛基金の創設などで合意

MAGAZINE

特集:インテリジェンス戦争 中国の標的

2017-6・27号(6/20発売)

CIAの情報提供者を処刑し、日本人12人を容赦なく拘束──。スパイ戦を強化する中国インテリジェンスの最終目標

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    世界最恐と化す北朝鮮のハッカー

  • 2

    シリアで米軍機を撃墜すると脅すロシアの本気度

  • 3

    ドイツでタイ国王がBB弾で「狙撃」、これがタイなら......

  • 4

    支持率急降下の安倍首相、3期目に暗雲 7月の都議選…

  • 5

    気になるCMを連発、旅行サイト「トリバゴ」の意外な…

  • 6

    D&Gが女性歌手に激怒した理由はメラニア!? 

  • 7

    アジアに迫るISISの魔手 フィリピン・ミンダナオ島…

  • 8

    エリザベス女王にも愛想を尽かされた?メイ英首相が…

  • 9

    ISISが国家樹立宣言したモスクを自ら爆破 イラク首…

  • 10

    アメリカ南西部で52.8℃という猛暑 高齢者など4人死亡

  • 1

    アジアに迫るISISの魔手 フィリピン・ミンダナオ島の衝撃

  • 2

    就任5カ月、トランプは馬鹿過ぎて大統領は無理

  • 3

    ロンドン高層住宅火災で明らかに イギリスが抱える「貧富の格差」

  • 4

    モンゴル人を大量「虐殺」 記憶遺産に値する中国の罪

  • 5

    イーロン・マスク「火星移住は生きている間に可能だ…

  • 6

    北朝鮮、米国人大学生釈放を発表 拘束中暴行され昏…

  • 7

    ISIS戦闘員を虐殺する「死の天使」

  • 8

    世界最恐と化す北朝鮮のハッカー

  • 9

    エリザベス女王91歳の式典 主役の座を奪ったのはあ…

  • 10

    身体が不自由な患者の頭をドナーの身体に移植する「…

  • 1

    ヤマト値上げが裏目に? 運送会社化するアマゾン

  • 2

    国交断絶、小国カタールがここまで目の敵にされる真の理由

  • 3

    人相激変のタイガー・ウッズが釈明 いったい何があったのか

  • 4

    大丈夫かトランプ 大統領の精神状態を疑う声が噴出 

  • 5

    アジアに迫るISISの魔手 フィリピン・ミンダナオ島…

  • 6

    佐藤琢磨選手のインディ500優勝は大変な快挙

  • 7

    就任5カ月、トランプは馬鹿過ぎて大統領は無理

  • 8

    アイシャを覚えていますか? 金正男暗殺実行犯のイン…

  • 9

    ロンドン高層住宅火災で明らかに イギリスが抱える…

  • 10

    メラニア夫人が手つなぎ「拒否」、トランプは弱って…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

日本再発見 シーズン2
ニューズウィーク試写会「ファウンダー」
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 別冊

0歳からの教育 知育諞

絶賛発売中!