コラム

Googleに挑む男から見たAIの今と未来 PerplexityのAravind Srinivas氏

2024年04月09日(火)11時40分

このほかにも以下のような興味深い発言がありました。

【Perplexityは、wikipediaとchatGPTの子供】

作りたいのは、Wikipediaのような情報の中から、ユーザーに興味のある部分だけを、自然な言葉で文章にしてくれるサービス。情報の中からユーザーが欲しいものだけを表示する。例えばWikipediaで映画スターウォーズのことを調べようとすると、Wikipediaのスターウォーズのページ上には、これまでの作品のあらすじから俳優、興行成績、関連ゲーム、登場キャラクター、劇中用語など、あらゆる情報が載っている。ユーザーはあらすじだけに興味があるのかもしれない。Wikipediaのページから欲しい情報を探し出すよりも、ユーザーが欲しがっている情報だけを答えてあげるほうが親切。「それができれば、世界の人気サイトの5本の指に入ることができるはず」という。Googleに挑んでいるようなイメージが強いが、「それができればGoogleを倒す必要がない」(6:10)という。


【Google誕生の背景と、今のジレンマ】 

AI技術の中でも自然言語処理技術は、文章を理解して、文章を生成できる技術。検索エンジンは、本来なら自薦言語処理技術を利用すべきサービスだ。ところがGoogleが誕生した当時は、自然言語処理技術がまだまだ十分に発達していなかったので、Webページ上の情報の意味や重要性をAIが理解できなかった。そこでGoogleの創業者たちは、自然言語処理技術でWebページの重要性を測るのではなく、そのWebページにどれだけ多くのリンクが貼られているかで重要性を測ることにした。価値のあるWebページなら他のWebページから数多くリンクを貼られているはず、という考え方だ。

これが大成功。Googleは巨大企業に成長した。

ところが自然言語処理技術がここにきて急速に進化してきた。リンクの数で重要性を判断しなくても、AIは何が重要なのかを理解できるようになり、重要な情報をまとめて文章を生成することも可能になった。ユーザーは、検索結果のページ上のリンクを順番にクリックしてそのページに飛ばなくても、チャット型AIが質問にダイレクトに答えてくれるようになったわけだ。明らかにそのほうが便利だ。検索エンジンからアンサーエンジンへと時代へ移行しようとしている。

それでもGoogleはリンクベースの検索エンジンにこだわる。

「プロダクトの観点で言えば(リンクではなく)直接答えを提示することが正しいと分かっていても、Googleは株価の観点からそれができないでいる」(2:59)とSrinivas氏は指摘する。

Googleは、広告主のページへのリンクが表示されたり、ユーザーがそのリンクをクリックすることで収益を得ている。チャット型AIでは、ユーザーはリンクをクリックしない。広告収入が入ってこなくなる。なのでGoogleは、OpenAIやPerplexityのようにチャット型AIに全力で向かえないわけだ。いわゆるイノベーターのジレンマという現象だ。「Googleの目指しているものとユーザーの求めるものが一致していない」(0:36)とSrinivas氏は言う。

リンクベースの検索エンジンからアンサーエンジンへと移行する中で、Googleは収益モデルをどう変えてくるのだろうか。検索連動型広告を続けながらも、別の収益源を探すしかないとSrinivas氏は言う。OpenAIがやっているような、エンドユーザー向けのサブスクモデルもそうだし、企業向けのAPI利用料金もそうだが、収益になりそうな事業を片っ端から試していくしかない、とSrinivas氏は言う(12:47)。「Googleが大胆な戦略転換に出るかどうかは分からない。でも僕の勘では、GoogleはOpenAIなど他社が試して成功した方法を真似てくるだけではないかと思う」(13:29)。

【検索連動型の次のビジネスモデル】

今の多くのAIサービスのビジネスモデルは、月額20ドル程度のサブスクリプション収入と、従量制のモデル利用料だ。これがAI時代のビジネスモデルなのだろうか。

Srinivas氏は「No」と言う。

ネット上で成功したビジネスモデルはどれも、パフォーマンスベース。Googleの検索連動型広告も、Facebookのインプレッション広告も、利用件数が多ければ多いほど儲かるような仕組みになっている。「(そういうビジネスモデルを)見つけることができれば、より大きな収益を得ることができると思う」(34:45)。どこがいち早く、そういうビジネスモデルを見つけることができるのだろうか。アンサーエンジンに消極的に取り組んでいる企業より、積極的に取り組んでいる企業の方が、新しいビジネスモデルを見つけ出す確率が高そうだ。

一方でSrinivas氏は、OpenAIはサブスクモデルで十分に収益を上げていると指摘する。「OpenAIのサブスクモデルは既に成功しているという話を耳にした」。会社全体で見ればOpenAIはまだ赤字企業だが、リサーチ部門と、製品部門で会計を別にすれば、製品部門は既に黒字になっているはずだと言う。資金力にものを言わせた開発競争が続いているので会社としては赤字だが、OpenAIのサブスクからの収益は、米国のネット大手のDoor DashやUberよりも大きなビジネスになっているはずだと言う(35:22)。

【大規模言語モデルの勢力図】

大規模言語モデルの開発競争の先頭集団は、今のところOpenAI、Anthropic、Mistral、Google。それにX.aiが入ってくるかも、といった感じ。

「先頭集団が3社か4社というのは間違いない。しかしそのダイナミズムは流動的。OpenAIがリードするのか、抜きつ抜かれつの関係なのか。MetaがオープンソースのモデルでOpenAIやAnthropicのビジネスの邪魔をするのか。そういうところが不透明」(54:39)

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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