コラム

「シリコンバレーの太陽」とまで称された「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」に対する海外の評価を集めてみた

2019年09月17日(火)18時00分

投資手法としては、他のベンチャーキャピタルが初期段階のベンチャー企業に投資するのに対し、ビジョンファンドは上場直前のユニコーンと呼ばれるような大成功しているベンチャー企業だけに投資する。

初期段階のベンチャー企業は、まだ実績がなく成功するのか失敗するのか、判断が難しい。この段階の多くの企業は失敗するのだが、中に大化けして大成功する企業がある。1社でも大成功して、他の無数の失敗企業の損失を上回る儲けを出せば、ファンドとしては成功になる。

一方で上場直前の企業への投資は、投資先企業が倒産する可能性は低くなるが、投資先企業の評価額が高くなるため投資額が膨らむ。またこの時点からの大化けは期待できない、というデメリットがある。

初期段階と上場直前。どちらの投資手法が有利なのか。ビジョンファンドの投資手法が優れていると考える根拠として孫氏は、「投資先のCEO同士を紹介すると意気投合し、協業する。それがシナジー効果を生む」と説明している。

そのシナジー効果が功を奏しているのかどうか分からないが、孫氏によると、一般的なベンチャーキャピタルの利回りの平均は13%だが、ビジョンファンドは「年間当たり45%の利益を実現した」という。「投資していただいた皆さんには大変喜んでいただいた。2号ファンドにもぜひ参加したいという熱い声をいただいている」と語っている。

「目をつけられたら最後」

孫氏が自分のファンドを絶賛するのは当然だが、世界のメディアや関係者の間には、ビジョンファンドに批判的、もしくは懐疑的な意見も多い

シリコンバレーのベンチャーキャピタルBenchmark社のBill Gurley氏は「ソフトバンクは資金を武器として使っている」と解説する。「ソフトバンクがあなたの事業領域に関心を持てば、あなたの会社はもう戦いに巻き込まれている」と同氏は言う。資金を必要としていないからといってソフトバンクからの出資を断れば、巨額の資金はライバル社に行く。「経営者にとっては非常に難しい選択だ」とGurley氏は指摘する。ソフトバンクのさじ加減一つで業界の勢力図が塗り替わる。ビジネスインサイダー誌が、シリコンバレーはソフトバンクという太陽の周りを回る星座群だと評したのは、こういうことなのかも知れない。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ドンバス全域割譲を要求、ロシアの主張変わらず=ペス

ワールド

マクロスコープ:住宅コスト高騰、国内消費の重荷に 

ワールド

韓国、年金基金のポートフォリオ見直しへ 為替変動と

ビジネス

エンブラエル、2年以内に年間納入100機目指す=幹
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 6
    「楽園のようだった」移住生活が一転...購入価格より…
  • 7
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 8
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 9
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 10
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 7
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story