コラム

AIを利用した創薬、新素材開発の時代がやってきた

2019年04月04日(木)13時26分

「人間は、欲しい特性を設定するだけ。あとは全自動装置が勝手に化合物を作り出してくれる。簡単なプロジェクトなら、化合物はすぐにできるだろう。複雑なプロジェクトなら、時間がかかるかもしれない。いずれにせよ、人間が作るよりも時間もコストも格段に少なくて済むはずだ」とBecker氏は言う。

市販の薬の特性を入力すれば、構造が異なるのに同じ特性の薬を作り上げることが可能。市販されている薬のメーカーに、ライセンス料を支払う必要がない。

これまでにない化合物を作ることも可能だ。固まるのが速いセメント、特定の雑草にだけ効く安全な除草剤など、「アクセス可能な市場は無限にある」とBecker氏は言う。既に建設会社や、素材メーカー、化学薬品メーカーなどから、多くのアプローチを受けているという。

今は、「青色を吸収しない化合物」の生成の実験を1月から進めている。AIが構造データを絞り込んでおり、それを基にロボットアームが化合物を生成して実験している段階。夏までに実験に成功すれば、秋にはシリーズAの資金調達を行う計画だそうだ。

わが社も業界大手になる

大手企業からのパートナーシップを求めるアプローチが多いが、「われわれも業界大手になるつもり。なのでパートナー選びは慎重に行いたい」と語っている。また全自動装置があまりにもパワフルなので、「倫理についても考えながら進みたい」としている。

「ヘルスケア、地球温暖化、大気汚染、気候変動、エネルギー、ヘルスケア、大気汚染、サステナビリティなど、現代社会は問題山積。今ほど新素材が求められている時代はない」とBecker氏は言う。

果たしてKebotix社が、AIxバイオx素材の時代に一番乗りするのだろうか。その答えを知るには、同社の実験結果を待つしかないが、新しい時代の幕が上がろうとしていることだけは、間違いなさそうだ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB、政策金利を0.25%引き下げ 過去1年で8

ワールド

プーチン氏、イラン核問題仲介に意欲 ロシアの緊密な

ワールド

米国防長官、NATOの5%目標合意を確信 首脳会議

ビジネス

英企業、7割が米関税の影響予想せず 中銀調査
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪んだ認知
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    女性が愛馬に「後輩ペット」を紹介...亀を見た馬の「…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    韓国大統領選挙、イ・ジェミョンが勝利宣言「第1の使命…
  • 8
    【クイズ】金属の錆を防ぐ「クロム」の産出量が、世…
  • 9
    韓国新大統領にイ・ジェミョンが就任 初日の執務室で…
  • 10
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 7
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 8
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 9
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 10
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 10
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story