コラム

テック大手が軒並みスマートスピーカーに参入する理由

2017年05月24日(水)17時30分

ただ関係者によると、ソニーは、Google、LINEとも協力するが、自社のクラウドAIも推進していく戦略らしい。

当然、その方向だと思う。この戦いから降りるということは、次のパラダイムの戦いから降りるということ。ソニーほどの規模の会社で、最初から次期パラダイムを諦めるなどということはありえない。

一方、リクルートがチャットボットを開発しているというのは、以前のコラムで報告した通り。チャットボットのテキストを音声に変換し、その仕組みをスピーカーに搭載すればスマートスピーカーになるし、ぬいぐるみに搭載すればコミュニケーションロボットになる。チャットボットは、クラウドAIの1つの表現の形でしかありえない。恐らくリクルートは今後、いろいろなメーカーと組んで、いろいろなデバイス上に自社のクラウドAIを展開していくことだと思う。

またヤフー・ジャパンも黙ってはいないだろう。ヤフー・ジャパンの日本語処理AIは、世界でもトップレベル。日本語処理を含む音声認識AIでは、Googleよりも精度がいいとも言われている。最近は、AI企業であることを高らかに宣言する社が増えているが、ヤフーはある意味、もともとがAI企業。自然言語処理に関する国際的なカンファレンスで、過去に何度も論文が採用されるほどの実力を持っている。

ヤフーはまた、絶好調のEC事業を含め、AIに必要な多種多様なデータも持っている。AIで攻めに転じれば、大躍進することは間違いない。

スマホの次はどんなパラダイムになるのだろうか。これまで多くの人がこのテーマで議論してきた。僕自身、ボイスが次のパラダイムだと思った時期もあった。VRが次のパラダイムだという主張もある。

【参考記事】次のキーテクノロジーは音声、次の覇者はAmazon

しかしC向け大手テック企業の動きを見ると、どうやら次のパラダイムはクラウドAIであり、ボイスやVRはそのパラダイムの1つの側面に過ぎないことが分かってきた。

次のパラダイムの覇権をめぐり、今年後半は各社からの製品発表のラッシュが続くことだろう。そうした製品発表の本質が、クラウドAIであることを理解すれば、各社の戦略がより鮮明に見えてくることだろう。

さあ、次のパラダイムの覇権をめぐる戦いの幕が切って落とされた。


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プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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