コラム

AIの新たな主戦場、チャットボットの破壊力

2016年09月13日(火)16時09分

Kirillm-iStock.

<AIの応用領域の1つチャットボットは、実は日本がいちばん進んでいる。既存のマシンとの会話の制約を打ち破るチャットボットの可能性が凄い>

 AIといえば、自動運転、碁などの領域での進化ぶりが、連日のように報道されている。しかし、もう1つ急展開しているAIの領域がある。チャットボットの領域だ。

 Facebookがチャットボットのプラットホームを発表したり、Microsoftの新CEOがチャットボットはコンピューティングのがパラダイムシフトだと宣言するなど、米国のテック大手も大胆に動き始めた。しかしその商業化で世界で最も進んでいるのは、実は日本だ。

日本はチャットボット先進国

 日本のチャットボットの先駆け的な成功例は、リクルートのアルバイト情報サイト「fromA navi」が提供するLINE公式アカウント「パン田一郎」というキャラクターだ。パン田一郎は雑談トークに加えて、バイト探しや給料計算に関する質問をしても、トークで答えてくれる。バイトの次回のシフトを教えておくと、忘れないように出勤前にLINEのトークでお知らせしてくれる。

 パン田一郎が登場したのは、2014年7月。2年前の段階で、ここまでの機能を装備し人気になったチャットボットは、世界的に見てもほとんど例がないという。LINEの上級執行役員コーポレートビジネス担当の田端信太郎氏は「欧米で話題になっているチャットボットの事例を見に行っても、LINEで随分前からやっているようなシンプルなものばかり。企業への導入件数や実際の対話総数では、LINEが世界でも最前線にいるのではないか」と語っている。

 田端氏は、パン田一郎を見て、チャットボットの可能性に驚いたという。「それまでも企業が、公式アカウントと友だちになってくれたユーザーに対してお知らせを一方的に送るということはあった。だがパン田一郎のような雑談型チャットボットにすると、ユーザーとの対話数が段違いに多くなった」「一方通行のコミュニケーションより双方向のコミュニケーションがLINEといかに相性がいいのかが、はっきり分かった」という。

 パン田一郎の成功を見て、他社からもLINE上でチャットボットを導入したいという要望が寄せられるようになったが、パン田一郎はリクルートが開発したチャットボット。リクルートはパン田一郎に搭載している技術を他社にライセンスする考えはない。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米国民、「大統領と王の違い」理解する必要=最高裁リ

ワールド

ロシアの26年予算案は「戦時予算」、社会保障費の確

ビジネス

米8月小売売上高0.6%増、3カ月連続増で予想上回

ワールド

トランプ氏、豪首相と来週会談の可能性 AUKUS巡
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story