コラム

中国共産党と中国人を区別して考えてはならない

2021年07月21日(水)14時14分

これは共産党の政策変更というよりも、漢民族が抱く他者への恐怖が膨張してきたことを意味しているのではないか。漢民族が他のどの民族よりも中国共産党のジェノサイドを支持している結果、共産党はもはや民族政党に変質した。そのためか、ジェノサイドをやめろと発言する中国人は少ない。

私の見解は、実はある漢民族の識者の著作からヒントを得ている。『私の西域、君の東トルキスタン』(邦訳・集広舎)の著者・王力雄(ワン・リーション)だ。新疆ウイグル自治区では政府幹部も「物乞い」も例外なく共産党の対ウイグル強硬策を支持しているので弾圧が苛烈だと、彼は21世紀初頭に現地を調査旅行した後に書いている。

「物乞い」は普段から党に搾取・抑圧されているが、政府に対する不満をウイグル人に転嫁しながら共産党と一体化していく、という。ウラーンフーと王力雄の指摘を今日の状況に照らし合わせて思考すると、中国人と中国共産党を区別すべきとの見解は浅はかに見える。

国内の諸民族だけでなく、他国への対応について一般の中国人が中国当局を支持する理由もまた同じ背景に由来しているのではないか。異国は異民族がつくったものだからである。

プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB議長候補11人と9月1日前後に面会、絞り込み

ワールド

中国外相、レアアース需要への対応約束 インド当局者

ワールド

ハマス同意のガザ停戦案、イスラエルは回答を精査中 

ビジネス

中国シャオミ、第2四半期は予想上回る30.5%増収
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 5
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 6
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「これからはインドだ!」は本当か?日本企業が知っ…
  • 10
    アラスカ首脳会談は「国辱」、トランプはまたプーチ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story