中国共産党と中国人を区別して考えてはならない
これは共産党の政策変更というよりも、漢民族が抱く他者への恐怖が膨張してきたことを意味しているのではないか。漢民族が他のどの民族よりも中国共産党のジェノサイドを支持している結果、共産党はもはや民族政党に変質した。そのためか、ジェノサイドをやめろと発言する中国人は少ない。
私の見解は、実はある漢民族の識者の著作からヒントを得ている。『私の西域、君の東トルキスタン』(邦訳・集広舎)の著者・王力雄(ワン・リーション)だ。新疆ウイグル自治区では政府幹部も「物乞い」も例外なく共産党の対ウイグル強硬策を支持しているので弾圧が苛烈だと、彼は21世紀初頭に現地を調査旅行した後に書いている。
「物乞い」は普段から党に搾取・抑圧されているが、政府に対する不満をウイグル人に転嫁しながら共産党と一体化していく、という。ウラーンフーと王力雄の指摘を今日の状況に照らし合わせて思考すると、中国人と中国共産党を区別すべきとの見解は浅はかに見える。
国内の諸民族だけでなく、他国への対応について一般の中国人が中国当局を支持する理由もまた同じ背景に由来しているのではないか。異国は異民族がつくったものだからである。
この筆者のコラム
ウクライナ戦争は欧米と日本の「反ロ親中」思想が招いた 2022.03.16
「人権侵害は痛くもかゆくもない」日本の根底にある少数民族軽視とアジア蔑視 2022.02.08
運営停止に追い込まれた香港民主派メディアが筆者に語ったこと 2022.01.15
台湾有事勃発のシナリオ――中ロはこうして日本を「沈没」させる 2021.12.11
ウイグル、チベット、内モンゴル......中国による民族弾圧の原点は毛沢東にあり 2021.11.30
中央アジアとアフガニスタンが「中国の墓場」になる日 2021.10.16
タリバンと中国共産党が急接近する必然の理由 2021.09.21