コラム

安倍訪中に経団連の利権あり......「一帯一路」裏切りの末路

2018年10月25日(木)15時30分

今月、北京を再訪して李克強首相に会談した経団連の中西会長 Daisuke Suzuki/REUTERS

<円借款も天皇訪中も報われなかった日中友好40年――人民元を熱愛する財界は冷静な対中感情を無視するのか>

安倍晋三首相による10月25日からの訪中を前に、興味深い数字が公表された。日本の言論NPOと中国国際出版集団が8~9月に日中の両国民を対象に実施した共同世論調査だ。

日本に「良い」印象を持つ中国人は「どちらかといえば」を合わせて42.2%。05年の調査開始以来、最高となった。

一方、中国に対する印象が「良い」と答えた日本人は「どちらかといえば」を合わせて13.1%。「良くない」という人は「どちらかといえば」を合わせて86.3%に上る。

調査結果はある意味、日本人のクールな処世術を物語っている。中国は世界第2位のGDPを誇る大国になったが、覇権主義的な振る舞いをする指導者と観光客のマナーが日本で反感を買っている。訪日客が急増していた数年前には東京・銀座を闊歩しながら唾を吐き、植え込みに排泄する姿が話題になった。

日本人は中国人民ならともかく、人民元を熱烈歓迎し続けている。中国の指導者が愛用する「もっと文明的な行動を取るように」といった言い回しで、安倍首相は習近平(シー・チンピン)国家主席に要請してくれないか、と訪中に期待する日本人もいるかもしれない。

「安倍首相はもっと戦略的な話を中国政府とするだろう」と夢を抱く人々もいるはずだ。ウイグル人を弾圧し、100万人規模で「再教育センター」と称する強制収容所に送り込むなどの蛮行を中止するよう人権外交を進めてほしい、と願う人も大勢いる。

実際はどちらも期待薄だ。日本の経済界を代表する経団連は親中派で固まっており、銀座で金を落としてもらうだけでは満足しない。9月12日、中西宏明会長率いる経団連と日中経済協会、日本商工会議所の合同訪中団は、中国の首都北京で李克強(リー・コーチアン)首相と会談。自由貿易の堅持が必要との認識で一致したという。

会談の冒頭、深々と頭を下げる日本の財界人と無表情の李首相との会見の様子は皇帝に謁見する前近代的な「朝貢使節」のようだった。それにも懲りず、10月10日にも中西会長は福田康夫元首相と北京を再訪して李首相と会談した。

経団連と日中経済協会は中国が推進する「一帯一路」巨大経済圏構想に乗って、ユーラシアからアフリカまで世界を席巻しようとの空論を信じているのだろうか。

経営者たちはいまだに、欧米から「エコノミック・アニマル」と揶揄された頃の野心に突き動かされているかのようだ。

今回の安倍訪中も財界に突き動かされた感じは否めない。日本が第二次大戦後に構築してきた民主主義の理念を独裁国家に伝授することなく、ひたすら金儲けの話に終始しそうだ。

日米の分断を狙う習政権

そもそも習近平が主導する一帯一路は世界各地で拒否されるようになっており、日本は中国のジュニアパートナーとして道連れにされるだろう。中国は、日本が今まで築き上げてきた信用を利用して、「日中合作」という仮面をかぶって中国のプロジェクトを展開したいだけだ。

プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:日本株はイベント後も高値圏、「適温」の異

ワールド

タイ憲法裁、ペートンタン首相の失職認める 倫理規定

ワールド

英財務相は銀行の準備預金利子の課税を、シンクタンク

ワールド

トランプ一族「ビットコイン社会を愛している」 10
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ」とは何か? 対策のカギは「航空機のトイレ」に
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 7
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 8
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    自らの力で「筋肉の扉」を開くために――「なかやまき…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story