コラム

日本学術会議問題を「総合的俯瞰的に」考察して浮かび上がった、菅総理の驕り

2020年12月03日(木)21時26分

自衛街の航空観閲式に出席した菅首相(11月28日) David Mareuil/REUTERS

<このコラムは、「構造と文脈」の技術で複雑な情報を読み解く「コンテクスター」の筆者が、時事ニュースの真相に迫るものです>

 

<なんで、いま、みんな日本学術会議に関心を持っているの? 新政権のツッコミどころだからというだけでしょう>  - 社会学者の西田亮介・東京工業大准教授(37)のツイート

このツイートに象徴されるように新型コロナ対策やオリンピックの開催の可否等に比べて、この件は多くの国民にとってどうでも良い話かもしれない。

当事者ですら、会員の活動は研究者としては負担であり、任命されなかったらそれはそれで負担軽減されるので良いと言っている。また個別の研究者として学問の自由が特に侵される訳でもない。

また発生後、1ヶ月以上経過し、識者の争点も概ね語り尽くされた感もある。

但し、企業活動でも家庭でも、こういう一見些細に見える事柄に大きな構造上の問題が潜んでいる事がよくある。一部門の一組織の小さな人事、ちょっとした家事や家族イベントの考え方に、端的にその組織や当事者の闇を象徴する時がある。

複雑化する世の中をシンプルに理解する為の事象の構造化と文脈解釈の手法に則って本件が何故、戦後日本を象徴する事象であるのか、まずは「事象の構造」について考察したい。

I. 気づき、素朴な違和感

まずは、構造化のスタート、気づき、素朴な違和感を考えるところから始めると、

・100兆円国家予算の10万分の1、10億円の小さな予算の組織の公務員人事について行政トップの任命権者(首相)が一部の任命を拒否したという事案。これが何故、政権支持率にまで大きく影響するのか?

・日本学術会議、会員が言うようにそれほど日本の科学政策を担う重要な組織なら何故ほとんどの国民がその存在すら知らなかったのか?

の2点に尽きる。

II. 抽象化(潜む本質的なキーワードは何か)

政治家と学者

さらには、この対立問題の底流に潜む構造的なキーワード何か。

一つは明らかに、「政治家」と「学者」との本質的な立場の違いによる対立構造だ。

学者は、真理を探求する立場であり、往々にして思想や信条は国境を超えて連帯していく。また論理思考・批判的思考に基づいてあるべき論に徹底的に拘る。

一方、政治家は、国の安全保障等、国民の生命・財産・権利を守るのが本分だ。民主主義においては、選挙によって選ばれることから、本来国民世論の関心・要望には敏感であり、またそうあるべきだ。

プロフィール

安川新一郎

投資家、Great Journey LLC代表、Well-Being for PlanetEarth財団理事。日米マッキンゼー、ソフトバンク社長室長/執行役員、東京都顧問、大阪府市特別参与、内閣官房CIO補佐官 @yasukaw
noteで<安川新一郎 (コンテクスター「構造と文脈で世界はシンプルに理解できる」)>を連載中

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story