コラム

ロシア、日本領事「拘束」事件...海外で活動する日本人スパイは本当にいるのか?

2022年09月27日(火)19時21分
ウラジオストク夜景

ウラジオストク Pavel_Korr-iStock

<ロシア治安機関が「スパイ容疑」で拘束した日本領事はすでに解放されたが、中国などでもこうした日本人の拘束はたびたび起きている>

9月26日、FSB(ロシア連邦保安局)は違法な情報活動をしていたとして在ウラジオストク日本総領事館の領事を拘束したことが明らかになった。「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」として、48時間以内の国外退去を命じたことがニュースになっている。これはかなり厳しい措置だが、このケースでは、外交官ということで国外退去措置で済んでいるが、外交官でなければ逮捕されて有罪になる可能性もあった。

そんなケースが、2022年2月、 NHKで報じられている

「中国の上海で、去年12月、50代の日本人男性が当局に拘束されたことがわかりました。スパイ行為などの疑いが持たれているとみられ、現地の日本総領事館などが情報収集を進めています。複数の日本政府関係者によりますと、上海で去年12月、50代の日本人男性が、中国の法律に違反した疑いで、当局に拘束されたということです」

容疑の詳しい内容は明らかになっていなかったが、「国家安全当局によって、スパイ行為などの疑いが持たれているとみられるということです」という。

日本政府はこの男性が、本当に中国当局が言うようにスパイだったのかをもちろん把握しているが、詳しいことを明らかにすることはないだろう。スパイだとすればこの人物を危険に晒すことになるし、スパイではないにしてもそれを証明する術がないからだ。

実は中国での日本人スパイの話はちょこちょこ情報が出てくる。2015年からを見ても、現在、日本人16人が中国でスパイ容疑などにより拘束されている。そのうち、8人が刑期を終えて出所または釈放されており、1人が今年2月に獄中死していたことが判明している。残りの7人についてはその後どう扱われているのかは不明である。

日本の情報機関は中国でスパイ活動しているのか

ただここで疑問なのは、日本の情報機関が、中国でスパイ活動をしているのかということだろう。

そもそも、日本には対外情報機関はない。アメリカならCIA(中央情報局)があり、イギリスにはMI6(秘密情報部)、ロシアにはSVR(ロシア対外情報庁)、中国にはMSS(国家安全部)、ドイツにはBND(連邦情報局)、フランスにはDGSE(対外治安総局)、イスラエルにはモサド(イスラエル諜報特務庁)といったスパイ機関が存在する。

プロフィール

山田敏弘

国際情勢アナリスト、国際ジャーナリスト、日本大学客員研究員。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版、MIT(マサチューセッツ工科大学)フルブライトフェローを経てフリーに。クーリエ・ジャポンITメディア・ビジネスオンライン、ニューズウィーク日本版、Forbes JAPANなどのサイトでコラム連載中。著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』、『CIAスパイ養成官』、『サイバー戦争の今』、『世界のスパイから喰いモノにされる日本』、『死体格差 異状死17万人の衝撃』。最新刊は『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』。
twitter.com/yamadajour
YouTube「スパイチャンネル」
筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ハマスに60日間のガザ停戦「最終提案」

ビジネス

米ハーシー、菓子の合成着色料を27年末までに使用停

ビジネス

メキシコへの送金額、5月は前年比-4.6% 2カ月

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、ハイテク株安やトランプ関
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story