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イタリア事情斜め読み

ヴィズマーラ恵子|イタリア

クリスマスにフード配達員にキレられた話とイタリア政府キャッシュバック政策VS脱税大国

iStock-vladispas フードデリバリーサービスの配達員イメージ

| イタリアのキャッシュバック政策

12月8日火曜日より、2020年のキャッシュバックが開始された。
実店舗で発生した費用の10%を、クレジットカードやデビットカード、デジタル決済アプリ(SatisPay、Hype、Yap)などの追跡可能な手段を通じて払い戻すというイタリア政府の政策。

政府は12月中にATM、クレジットカード、電子購入申請書(小切手を除く)を利用して回収額を2倍にする計画。
これは、2020年12月1日から31日までの間に行われた10回の電子支払いをすると、「1回限りの」ボーナスが受けられる。
そして、クリスマススーパーキャッシュバックも追加された。

2020年12月1日から31日までに、実店舗でクレジットカード、デビットカード、およびアプリによる支払いを最低でも10回しないとキャッシュバックされないメカニズム。ネットのオンライン購入は除外され、オンラインショップで支払ったものはキャッシュバックされない。今のところ、定期購読や元々分割で支払っている月賦やリース代、家賃などの支払いにも除外でキャッシュバックは適応されない。


| キャッシュバックの仕組み

まず、特典にアクセスするには、
【第一関門】デジタルIDであるSpidが必要
これは、Aruba、Tim、InfocertなどのさまざまなプロバイダーやPoste Italianeから、オンライン登録とカウンターでのIDドキュメントの検証を通じてリクエストをするのだが、イタリア国民の大半が、このデジタルID"Spid"をリクエストする時点で脱落する。

つまり、メカに弱い人やスマホを持っていない人、ネット環境がない人、外国語の意味がよく意味がわからない人、など多数存在して、特にご年配の方々などは、デジタルIDを作ることが非常に困難だから。

この第一関門を突破した人は、次に
【第二関門】PagoPAIOアプリをダウンロードしてインストールする必要

プロセス全体を実行することが可能になったあと、【第三関門のApp IOに登録する】作業が待っている。
登録するには、Spidコードを使用する必要があるので、一連の流れで1つも欠けてはいけない。

行政プラットフォームは払い戻しを登録したアカウントに直接支払うため、国民税コード、払い戻しを受け取る為の1つ以上の追跡可能なクレジットカード/購入した商品の詳細が分かるようにすること、と銀行口座番号Ibanを入力して情報を提供しなければいけない。

IMG_9152.jpgのサムネイル画像
筆者の携帯よりApp IOアプリの画面


| 脱税大国イタリア、個人自由とプライバシーの問題

納税するという市民の忠誠心を奨励し、税の回避(脱税)と戦うイタリア政府の計画がこのキャッシュバック政策である。
それは大変費用のかかる計画ではあるが、イタリア政府は国民のお金の流れを把握したいという野心が見える。(政府は2021年から22年の2年間で47.5億ドルを割り当てている)
そんなキャッシュバック政策にも乗っからず、現金で支払う可能性のある人は、たくさんいる。
さまざまな正当な理由で現金を使用することを好む特定の社会的グループがいるという考察はできないのだろうか。

富裕層のずる賢い脱税 VS へぼい小銭を還元するからカード情報よこせという政府の政策

どちらが圧勝するだろうか。

支払い情報はアプリを介し、プライベートを政府に全て見透かされてしまう。
個人で買ったもので、趣味趣向や立ち寄った場所、月にどれくらい消費するかなど資産状況なども把握されてしまうのだ。
ただでさえサイバーセキュリティーがゆるゆるで、技術的な問題があるアプリケーションで欠陥だらけである。
そんなアプリで国民のお財布事情とお金の流れを政府が全て監視下に置くことに、抵抗がある人は、そもそもこのキャッシュバック政策には乗っからないし、完全スルーでニコニコ現金払いを貫いている。
そもそもカードも持たないしアプリに登録なんてしないだろう。

イタリアでは現金で支払える限度額が法律で決まっている。
当初、1991年の法律により、12,500ユーロに相当する制限が確立され、これが最初の画期的なターニングポイントとなった。
その後は、コロコロと現金使用に関する規律は無数に変化して法律も変わっていった。

2012年からトレモンティ政権のSave Italy Decreeによって追跡可能な現金で支払っても良い限度制限額が1000ユーロだと決められた。当時の為替レートでユーロが強かったので、1ユーロ146円ほどだったと記憶している。1000ユーロは、約14万6千円ほどになる。
現金で支払っていい金額は14万円まで。
マネーロンダリングやテロ資金供与を目的とした金融システムの使用を確実に防止するために、201/2011法が導入された。
2012年のこの財政令n.124条が施行される前に、Appleには大行列ができた。コンピューターなど、1000€を超える商品が現金で買えなくなるので、みんな法律が導入される前日に高額商品が飛ぶように売れた。

2016年からは、なんらかの理由で、さまざまな目的と用途で任意の通貨で交わされる制限額は、現金または無記名銀行、または郵便貯蓄帳簿または無記名証券の譲渡に限定され、3000ユーロまでと引き上げられた。
イタリア市民でもないし、イタリア居住者でもない対象者による購入であれば1万ユーロまでは現金で支払っても良いというように変更もされた。
制限された法令があるということは、それに違反した場合の罰則もしっかりある。
2016年からは罰金が3000ユーロであった。現金の総金額によって%が上昇する。現在は1000€の制限に違反した場合は、銀行預金通帳や郵便貯蓄帳簿の残高の20%〜30%の範囲で差し押さえられ、それが罰金金額となると総額された。

しかし、2020年予算法によって、2020年から2021年の2年間は現金の使用制限は2000ユーロに引き下げされ、さらに段階的にまた、2012年当時の1000ユーロになるという。(現時点でのレートで1000ユーロは約12万6千円)
控除可能な費用の追跡可能性の義務を19%に下げ、ビジネス商人と専門家のコミッションに30%の税額控除を課した。

たかが最大支出1500ユーロのうちの10%、つまり150ユーロ(約18,900円)のつりエサで、私事を国から知られたくないという金持ちグループもいる。個人の自由とプライバシーの侵害であるし、とりわけこれらの機密データの使用については強く懸念されている。

現在のところ、プログラム開始から5日後には、390万人以上がキャッシュバックにサインアップしたと政府が発表した。(データは12月12日土曜日の11時に更新された)。並行して、登録された電子支払い手段が​​増加した。
IOアプリから、または他の利用可能なチャネルを通じて、合計700万を超えるものがアクティブ化された。

技術的な問題がありアプリケーションの「ポートフォリオ」セクションで大量のトラフィックフローが発生したので、バグが起こり機能が完全にパンクした。
これは、イタリアではよくある事で、システム障害でグタグタの出始めとなるのはこれまで通りお決まりのパターンだった。

これは想定内・・・

12月7日の早朝だけでも、App IOは「約50万件の新規リクエストを受け取り、ピーク時は1秒あたり約6,000アクセスがあった。
しかし、12月8日の朝、「イニシアチブに関与する決済部門のサブジェクトによって利用可能になった他のチャネルからの追加の登録を除いて、約40万の新規登録があったと内閣府が再び通知した。

最終的には、キャッシュバックプログラムの加入者の総数は約230万人のユーザーが登録した(できた)。

ウォレットセクションへのアクセスと支払い方法の追加が困難だったらしく、エラーは一日中続いた。
このエラーの時期に登録できた加入者が買い物をしても、全くそれはキャッシュバックには反映されていない。初日に実行された1日分のキャッシュバックはキャンセルされた。10回のトランザクションの1回にもカウントされていない。

そして、夕方になっても、システムエラーメッセージは続いた。
これは明らかに、キャッシュバックの「不完全な失敗スタート」だった。


つまり、火曜日にシステムの技術的な問題に直面し、キャッシュバックの反映を開始するには2日後にアクティブになるため、水曜日に支払い方法を追加した人の場合、更にもう1日待つ必要があり、最初の2日間に費やした金額が全て無効となり失われた。


| AppIoの「システム障害」

によって、受け取れなかった無効の日数と不便だった時期分、延長をしようと、キャンペーンの実施期間の延長を試みるという政府。(2020年12月31日から2021年1月6日までに延長する予定)。

これは、キャッシュバックプログラムの最初のフェーズで設定された上限である150ユーロの払い戻しを誰もが「獲得」できるようにするためだというが、苦しい言い逃れである。
来年1月1日からは「通常」フェーズで、最大300ユーロのキャッシュバック「プレミアム」が再設定された。


年間では300ユーロに相当する。
払い戻し可能な金額は6か月毎で150ユーロ、または最大支出1,500ユーロまでの10%になる。
要件は、6ヶ月の期間中に任意の金額の少なくとも50回の支払いを行うこと。
補償に関する最初の払い戻しは2021年6月、そして2番目の払い戻しは来年の12月にされる。

アカウントに登録した銀行口座へ直接キャッシュバックがされる(割り当てられた10億ユーロは2021年に3度、2022年に3度)。

| 仮想払い戻し

正確に正常に機能し始めて開始後1週間の状態キャッシュバックは、
IOアプリケーションで作った経費の最初の償還を始めた(キャッシュバックの履歴を見るためには、アプリへの反映は支払い実行した時間から72時間かかる)。
12月31日の期限までに最低10件のトランザクションに達した場合のみ、行政に申請書した自分の銀行口座Ibanに直接入金される。
初回の払い戻しが行われ入金される予定日は、2021年2月28日だという。

現在のところ、私のキャッシュバックの実態はこんな感じでアプリに表示されている。

IMG_9153.jpg
筆者の携帯よりApp IOアプリの画面

1500€のキャッシュバックを受けてゲットするには、簡単にいうと

【10回は支払い実行しなければいけない】例えば

100ユーロの商品をx9回購入して900ユーロ、その10%がキャッシュバックなので90ユーロ

150ユーロ〜1500ユーロまでの商品を1回購入して、そのキャッシュバックは15ユーロ。

(※400ユーロ のものを買おうと、1000ユーロのものを買おうと、150ユーロ以上のものは10%ではなく一律15ユーロのみ)

90ユーロ+15ユーロで105ユーロのキャッシュバックを受けることができるという感じである。

2020年の年内分で計画されている財政的補償範囲(2億2800万ユーロ)で十分であると仮定されている。
実際、資金が十分でない場合、消費者は、法令No.に記載されているように、キャッシュバックも「比例して減少する」と見なしている。

言うことがコロコロ変わるのもイタリア。
予定は未定であって決定ではない。常に減少や悪いマイナス方向への転換になる。



| キャッシュバックフィールドテスト

キャッシュバックが正しく機能しているかをテストするために、自分のプロファイルからさまざまな場所でカードで支払いの方法でいくつかの購入を行った。
そしてこれまでのところ、すべてが順調に進んでいる。
カードを登録した同じ日は、技術的トラブルが問題視されて払い戻しを受けることができなかったという出始めのグズグズ具合は、想定内だったので、その後に登録した。

正常になったとのニュースを見て、カードを登録した。
この点でApp IOによって提供される表示は明確であった。「支払い方法は有効になった翌日に操作可能になります」とある。
スーパーマーケット、ガソリンスタンド、おもちゃ屋、電子機器、衣料品店などで支払った金額とキャッシュバックされる額が記載されてあった。実際の買い物日から2日後にアプリに履歴が載っている。


○仮想ウォレット
IOアプリでは、仮想ウォレット、つまりApple Pay、Google Pay、Samsung Payは、アプリケーション自体で読み取ることができるように、現時点では有効になっていない。
このサービスは1月に運用を開始する予定だそうだ。
したがって、現在、管理アプリケーションを介して登録および有効化されたカードは、仮想ウォレットでは使用できない。
しかし、このサービスを提供する代替の「発行者」を通じて州のキャッシュバックへの固執が行われた場合、NFC(ニアフィールドコミュニケーション)テクノロジーを搭載したスマートフォンからも支払うことが可能になるという。

これらのツールは、Apple Pay、Google Pay、SamsungPayでカード自体を「トークン化」したときに作成された物理カードの仮想クローンにすぎないからだと。ここまでの説明でご高齢の方でなくても、理解に苦しむ。

「もうすぐ、私たちがスマートフォンを介してこれらのツールで支払うことができるようになる」という意味だと理解した。

| キャッシュバック払い戻し日

第一期:2021年1月1日から2021年6月30日
第二期:2021年7月1日-2021年12月31日まで
第三期:2022年1月1日から2022年6月30日まで。
払い戻しは、各期間の終了から60日以内、つまり2021年8月、2022年2月、および2022年8月に、Consapによって現在登録しているアカウントに支払われる。

IMG_9151.jpg
筆者の携帯よりApp IOアプリの画面

あと、4回の実店舗で買い物をしなければ10回以上の支払いという条件を満たしていないので、キャッシュバックがもらえない。40,75ユーロをドブに捨てるのももったいないので、これは意地でもあと4回をクリアーしなければいけない。

しかし、イタリアはクリスマスのバカンスシーズン中は、全土ロックダウンで開いている店舗なんてない。宗教上の問題や文化風習的なものも加わる。

カトリックが大半を占めるイタリアで、1年に1度の大事な宗教行事であるクリスマスに働いていてはいけない。スーパーですら閉まっている。

クリスマスに営業しているのは、マクドナルドただ1店舗だけだった。

クリスマスの日に仕事することを選び、豪華なディナーも家族とせず、しかもこんな寒空の中、仕事が入るのを待機して待っているウーバーイーツの配達人がいることを知ったので、誰も頼まないだろうと思い、Uber Eatsでデリバリーを注文してみた。

イタリアでは、ウーバーイーツなどのフードデリバリーをしてくれる配達員はアフリカ系移民の方がしているお仕事で、ロックダウン中も大変活躍していた。

お気持ち、チップもたくさん弾ませようと思ったからだ。

「玄関先に置く」を設定して、「チトーフォノ(インターフォン)を鳴らしてください、インターフォンに貼っている名前はKEIKOで、それを押してください。ガラスでできた正面門の扉を開けるので、扉の内側に置いてください。」との注意書きも詳しく書いたが、

配達をしてくれた黒人のAさんが、伊語が分からなかったようで、

「フェアー・アー・ユー?(君、どこにいるの?)玄関まで降りて取りに来て!手渡しをするから」と・・・。

え?玄関先に置いてくださいって書いてますよね。

「フェアー・アー・ユー?僕はここについています。」

仕方なく玄関先まで下りて取りに行くことにした。

マンションの外まで下りて取りに行くと、突然、この黒人のAさんから怒鳴られた。

「取りに来いって電話を2度もしたのにあんたは電話にも出ないし、俺を待たすなよ、こんな日でも仕事してるんだ、こっちの身にもなれよ」

と激怒している。

「グラッツェ・ミッレ!ありがとうございます。すみません、玄関先に置くというのを設定したんですけど。インターフォンを鳴らしてくれって書いてました。でも、ごめんなさい。」

電話は2度もしたというが、まさか自転車で移動している宅配員がミラノの市外局番02から始まる固定電話番号からかけてきているとは想像もしていなかったし、2度のワン切りだけで、応答できるはずもなかったという旨は、言い訳がましいのでしなかった。

実際は、突然怒鳴られてショックの方が大きかったから・・・

何も言い返す言葉が見つからなかった。

初めてのウーバーイーツで配達員に怒られて、チップで応援しようと思ったがとても嫌な苦い経験となった。

クリスマスでも仕事しようと待機したけど仕事がなく、寒空の中オーダーを待ち続けているのかなぁ、かわいそうだ。。。と勝手に想像してしまった自分の傲り高ぶりはよくなかったと反省した。

天からあの名台詞すら聞こえてきた気がした・・・

「同情するなら金をくれ!」

(もう一度くりかえすよ、大事なことは2度言おう)

『同情するなら金をくれ!』

(天才子役。安達祐実さん当時13歳!)

そんなふうに聞こえたから、彼に悪かったなと思って、それでもチップを送ったのであった。

さてさて、来年は良い年にしたい。

2021年から「標準キャッシュバック」:
6か月ごとに、最低50回の支払いが行われると、支出額の10%が取得され、合計で最大150ユーロが払い戻される。
2021年は、より広範なイタリアキャッシュレスプランが挿入され2022年6月30日まで有効。

来年からはどうなるか

12月31日にクリスマスエクストラキャッシュバックが終わると「標準キャッシュバック」が1月1日から開始される。
ショップ、バー、レストラン、スーパーマーケット、職人や専門家向けにカードや支払いアプリを使用して行われた購入額の10%の払い戻しを受けることができる。

来年もオンライン購入は除外。
最低支出額はなく、年間最大300ユーロの払い戻しを受けることが可能。
6か月ごとに、最低50回の支払いが行われると、支出額の10%が取得され、合計で最大150ユーロが払い戻し。(これは第一期となんら変わらない)1回の取引あたりの最大払い戻し額は15ユーロ。(これも変わらない)


イタリアのキャッシュバック政策は現金の使用を最小限に制限したり、それを使用する人にペナルティを課したりしないため、経済的策略としてどれほど十分に機能するか不明。またその根拠や有効性が得られないかもしれないが、脱税対策の効果を期待したい。

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

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