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オーストラリアの診察室から

高尾康端|オーストラリア

オミクロン株の猛威

画像:laurence soulez-iStock

12月中旬よりコロナに対する規制が緩和され、クリスマスと年末の人の集まりや移動により、クイーンズランド州のコロナ感染は瞬く間に増加しました。これは州境をいまだに規制している西オーストラリア州以外の州でも似たような感じです。

年末年始で旅行にいったり、家族で集まったり、パーティにいったりして広がったケースが多いようです。クイーンズランド州は当初は以前のように、症状がある人や濃厚接触者にはPCRの検査をするように勧めていました。またコンタクトトレーシングの情報も毎日にアップデートしていました。しかし症状のある人や濃厚接触者が多すぎて検査機関やコンタクトトレーシングはすぐに追いつかなくなりました。以前は24時間以内にPCRが検査の結果がでていましたが、1週間たっても結果が来ない人もいました。また検査場も検査をするキャパシティーを超え、通常なら毎日8時間は開いていたのですが、数時間で閉まってしまうようになりました。

12月末ぐらいまでは他州からクイーンズランドに入るにはPCR検査が必要でしたが、これも検査が追いつかないため廃止されました。コンタクトトレーシングも数が増えすぎ追いつかないのと、もはやそこら中に感染があふれているためアップデートされなくなりました。

オーストラリア政府はPCR検査機関の機能不全など緩和するためにいくつかの政策を発表しました。



濃厚接触者の定義変更

オーストラリア政府濃厚接触者を家族や同居者で、4時間以上一緒にいた場合のみ濃厚接触者になると定義を変更しました。これは大勢の濃厚接触により検査機関が機能不全になるのを防ぐのと、濃厚接触で隔離しなければいけない人の数を減らすためです。感染者や濃厚接触が多いため、いろいろな仕事やサービスに影響がでているのを抑えるためです。これについては医療関係者からかなり疑問の声が上がりました。濃厚接触の定義はころころ変えていいものではないというのが多くの医療関係者の意見でした。

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画像: gece33-iStock

迅速抗原検査

ここ一か月の間濃厚接触者の定義、隔離した場合のガイドラインなどが数日おきに代わっていきました。その一環の一つして、当初はコロナの診断にはPCR検査が必要でしたが、検査場の問題をうけ、政府は迅速抗原検査で陽性であればPCRは必要でないと変更しました。また隔離終了も当初はPCRか迅速抗原検査が必要でしたが、発症から7日以上で症状がなければ、隔離を終えられると変更しました。

しかし、迅速抗原検査はあまり問題の解決にはつながっていません。問題は迅速抗原検査が品薄であるためです。検査をしたくても検査キットがなくできない人も多く、検査ができたときには無症状になっている人もたくさんいました。また迅速抗原検査の買い占めや高額な値段での転売の問題なども発生しています。

迅速抗原検査の在庫はある程度増えてきたようですが、まだ需要と供給は追いていない状況です。そのため政府の公表の数倍の数の感染者がいるだろうと予測されています。

violetaStoimenova-iStock.jpg
画像: violetaStoimenova-iStock

コロナの大量感染が収まるのにはまだ時間がかかりそうで、医療機関の危機的な状態はまだ続きそうです。



参考
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-australia-dec29-idJPKBN2J806L

 

Profile

著者プロフィール
高尾康端

日本、スイス、シンガポール、アメリカで育ち、2004年からオーストラリアに移住。シドニー大学医学部を卒業。現在は東ブリスベンエリアHawthorne Clinicにて家庭医 (GP)として勤務。家庭医の観点からみる病気についての情報、また母国である日本と移住地オーストラリアの医療システムの違いや、オーストラリアで病気になった時に役立つ情報を発信している。

Twitter:@dryasutakao
Facebook:Dr Yasu Takao
ブログ:https://www.dryasutakao.com.au/blog

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