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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

僕らを受け入れてくれたドイツに恩返し 大洪水被災地で支援の手を差し伸べる難民たち

©kladu / pixelio.de

「6年前、難民の僕たちを快く受け入れてくれたドイツに感謝している。今度は僕らがドイツの被災者を支援したい」

こう語るのは、7月中旬の大洪水で甚大な被害を受けたラインランド・プファルツ州(RP州) アールヴァイラー郡にあるライン川沿いの街ジンツィッヒに出向き、後片付けを手伝うシリア人のファリスさんだ。 

ドイツ国内で170人以上の死者確認  

大洪水については日本でもすでに報道されているが、なかなか現地の細かい様子は伝わっていないこともあるかと思う。まずは今回の惨事を少しふり返ってみたい。

7月中旬、ドイツやベルギーで発生した豪雨が原因で大洪水となり河川が氾濫した。ドイツ西部では、RP州やノルトライン・ウェストファーレン州を(NRW州)中心に深刻な被害が出たほか、その後の新たな豪雨で南部バイエルン州や東部ザクセン州でも河川の氾濫が発生し、被災地も広がりつつある。

ドイツ第二テレビZDFによると、これまでにドイツ国内で少なくとも170人の死者が確認された。100年に1度とも言われる災害の全容は把握できていない。RP州で一番被害の大きかったアールヴァイラー郡では、わかっているだけでも132名の死者が出た。そして今も74名が行方不明だ。

そんななか、ドイツ国営の国際放送事業体ドイチェ・ウェレ(DW)の知人ジャーナリストから胸の熱くなるニュースが入った。(文末にTwitter を貼りました。是非ご覧ください)

大洪水が発生してからまもなく、ドイツ全国から被災地に出向き、片付けを手伝うボランティアが続々と現地入りした。彼らは、濁流の押し流した家具や家電、生活用品や衣類類など、いわゆる災害ゴミの後片付けに明け暮れた。

ボランティアの中には、かつて難民としてドイツにやってきた若者たちもいた。彼らはソーシャルメディアでの救援呼びかけに応え、ドイツ各地から被災地に駆けつけた。その一人がファリスさんだ。

「ドイツは6年前、大勢の難民に救いの手を差し伸べ受け入れてくれた。僕たちは多くの恩恵を受けた。今度は僕たちが被害にあった人達の手助けをする番。緊急の場でドイツ人も外国人も関係ない。皆が手をとりあってできる限りの支援をすべきと思った」と語るファリスさん。

難民の多くは、一瞬のうちに家族や家を失うことはどんなにつらいことか、自分の体験から知っている。

壊滅的な被害にあった被災者は、「生きているから大丈夫」と、自分に言い聞かせている人も多い。だが、これまで築きあげてきた商店や自宅を一瞬のうちに失ったショックは隠せない。災害時の特別保険にかかっていない人達は損害保険金を受け取ることもできない。今後どう復興していったらいいのか、不安は募るばかりだ。

一方で被災者は、大勢のボランティアの支援に勇気づけられている。「被害は大きいが、ボランティア活動もそれ以上に大きい。皆が目の前にある災害ゴミを処理するという連帯感で繋がっている。どこから来たのか、名前も知らない人達の手助けには心から感謝している」と、熱く語る被災者だ。

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著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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